12月2日の衆院選公示まで1週間を切った。大手メディアの世論調査をみると、安倍晋三首相の政策や政治手法に不満を感じている層が多い半面、比例区の投票先を聞くと自民党が群を抜いて高いという「不一致」や「ねじれ」が生じていることが分かる。

 共同通信社が19、20両日に実施した全国電話世論調査によると、安倍首相の衆院解散表明を「理解できない」と答えた人は63・1%にのぼった。

 朝日新聞社の同じ日の調査では「反対」が62%、日本経済新聞社などが21~23日に実施した調査でも「(解散は)適切でなかった」との回答が58%に達している。

 有権者は、今回の解散の手法を「あざとい」と否定的に見ているのである。「あざとい」とは「押しが強くて、やり方が露骨である」(広辞苑)という意味である。

 安倍首相が最大の争点と位置付ける経済政策「アベノミクス」について有権者の評価を聞いたところ、日経調査では「評価しない」が51%で、「評価する」の33%を大きく上回った。

 朝日新聞社が22、23両日に実施した連続世論調査でも、経済政策を「評価しない」が43%で、「評価する」の38%を上回っている。

 憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認や特定秘密保護法の制定に対しても、その乱暴な手法が強い批判を浴びた。

 そうした現実があるにもかかわらず、比例区の投票先を聞くと、どの調査でも自民党が群を抜いて高いのである。

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 前回、2012年の衆院選は、政権の座にあった民主党が自壊し、分裂につぐ分裂の結果、12党が乱立するという異常な状況の中で戦われた。

 自民党が圧勝し、自公両党が政権に復帰してあとも、野党は分裂を繰り返して弱体化した。

 野党が満身創痍(そうい)の状態で、選挙準備も整っていないこの時期に、安倍首相は大義のない「不意打ち解散」に打って出た。

 安倍首相が強気一点張りの政権運営を続けるのは、党内にも国会にも強力な反対勢力がいないからだ。

 民主政治の健全な発展にとって、「1強多弱」とか「首相1強」と呼ばれる現在の体制を継続するのが望ましいのか。それとも与党が圧倒的多数を占める衆院の勢力差を目に見える形で縮め、野党による政権チェック機能をもっと高めたほうがいいのか。

 衆院選ではその選択が問われる。

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 小選挙区制は、一つの選挙区で1人だけしか当選しない。前回選挙のように、野党が候補者を乱立すれば、組織力を誇る与党にはじき飛ばされ、共倒れするのは確実だ。

 巨大与党に戦いを挑むためには、野党間の候補者調整を早急に進め、競合区や不戦敗区のない状況をつくり出すことが不可欠である。

 今回から衆院の選挙区は5減の295となり、比例区を含めた衆院の定数は475となった。準備期間のない状況で選挙に突入する野党にとっては剣が峰の選挙となる。