6年前、北欧フィンランドの教育事情を取材した。教育省高官の「一人の子どもが自立した納税者に育つか、福祉に頼って生きるようになるかは国の死活問題。そのカギは教育にある」という言葉を今も鮮烈に覚えている

 ▼「親の経済状態で子どもが受けられる教育が決まる不平等な社会は、行き詰まるリスクが高い」。就学前から大学まで教育費無償の国。人材こそが宝というビジョンが明確だった

 ▼九州沖縄子ども支援ネットワーク交流学習会が29日、沖縄大学であった。今年で8回目。子どもの育ちをどう支えるか。各県の事例も参考に話し合う。教育や福祉の関係者が垣根を越えてつながりを深める貴重な場だ

 ▼現場からの報告を聞き、経済的理由で学びを諦める子や、賃金も社会保障も不十分な非正規の職場に出ていく若者の多さに胸が痛んだ。将来安心して暮らせる生活を築けるだろうかと心配になる

 ▼貧困や児童虐待の環境で育った子が同様の家庭を再生産する例も多い。自己責任や現場の努力だけで「負の連鎖」を断ち切るのは難しい

 ▼日本は経済協力開発機構(OECD)加盟国で教育費の公的支出が最下位レベル。奨学金を利子付きで返済させるような社会の仕組みを考え直す必要がある。一人の子どもが自立した大人に育つこと。その受益者は本人や親だけではない。(田嶋正雄)