安倍晋三首相は、今回の衆院選で自らの経済政策「アベノミクス」を最大の争点と位置付けている。

 衆院選公示の2日、福島県で第一声を発した安倍首相は「企業が収益を高めれば雇用は改善し、給料が増える。消費は増え、景気が回復する。これを繰り返せば生活は豊かになる」と、アベノミクスによる経済再生を強調した。

 「就業者数は100万人増加」「賃上げ率は過去15年で最高」。自民党の公約集には、アベノミクスの成果を強調する数字が並ぶ。確かに第2次安倍政権発足以来の株高や円安で、一定の経済効果は出た。

 しかし、4月の消費税増税後、経済指標は悪化。安倍政権の経済政策は、失速しているのではないか。

 厚生労働省が2日発表した10月の毎月勤労統計では、物価上昇の伸びを差し引いた実質賃金は2・8%減と16カ月連続でマイナスが続いている。総務省の10月の家計調査でも、1世帯当たりの消費支出は4月以降、7カ月連続のマイナスだ。

 消費税増税や円安による食料品などの値上げにより、個人消費は低迷。企業の賃上げは、物価上昇に追いつかず、賃金の目減りが続いているのである。国民の暮らし向きが良くなったとは、とても言えない。

 個人消費の低迷は、大企業の富がしたたり落ちるように、中小や家計を潤す「トリクルダウン」理論が実現していないだけでなく、社会保障政策も含め、安心できる将来像が示されていないからだ。

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 野党が批判するようにアベノミクスの「副作用」とも言える大企業と中小企業、富裕層と庶民の経済格差は顕在化している。

 SMBC日興証券のまとめによると、収益基盤を海外に置く電機や自動車が円安の恩恵を受け全体を押し上げ、上場企業の2015年3月期決算の純利益は前期を上回る見通しだ。

 一方で、中小企業の業況は悪化が続く。全国中小企業団体中央会の10月の景況調査では、景況感を示す指数がマイナス27・4で、売上高などを示す指標も7カ月連続で2桁以上のマイナスだ。

 野村総合研究所の推計では、預貯金や株式など金融資産を1億円以上持つ富裕層が13年末時点で101万世帯となり、民主党政権だった11年末時点の81万世帯から急増している。別の調査では、預貯金など金融資産のない世帯は全体の3割に上っている。

 日本社会の格差が確実に拡大しているのである。

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 県内の景況は、円安に伴う観光客の増加などを背景に拡大が続いている。製造業や農業は円安の進行によるコスト増で経営が圧迫されるなど、明暗が分かれている。

 雇用の面では有効求人倍率が復帰以降の最高値を5カ月連続で更新するなど改善が続くが、求人倍率を押し上げているのは非正規雇用だ。県内の有権者は、それぞれの生活実感を判断材料に、アベノミクスの是非を検討すべきであろう。