選挙区ごとの「1票の格差」を是正して投票価値の平等を求めるなら、「裁判所の憲法判断を尊重する人」を選ぶしかありません。議員定数の改定は、地元に選挙基盤のある人には既得権の侵害になります。

首都大学東京の木村草太准教授

 憲法に定められた国家の基本的な理念を優先できる人を選ばねばなりません。

 自己の利益のために動く人か、不利益でも公益を考えて行動できる人か。重要なのは「対立する立場の人とどこまできちんと対話できる人か」を見極めることです。不都合なことを指摘されてすぐに怒り出したり、話をそらしたりする人は信用できません。不都合でも誠実に向き合い、解決策を探せる人を探し出すしかないと思います。

 衆院選の14日には最高裁裁判官の審査もあります。国民に求められている役割は、内閣が裁判官を自分の都合や政治的な信条に基づいて選んでいないか、司法の独立を守るためにきちんとした人選がされているか、確認することです。積極的にバツをつける事情があるかが問われています。

 審査するときは法律家としての経歴をみてほしい。最高裁判事になる方は裁判官、弁護士、検察官のどこかでエリートコースを歩まれるのが一般的です。なんでこういう経歴の人が紛れ込んでいるんだろうと思ったら、その人について調べることが必要になります。

 人事権には危険が伴います。政治が都合のいい人事をするときの最大の特徴は、きちんとしたキャリアを積んでいない人を裁判官にすることです。政権にどんな意向があっても、やはり違憲なものは違憲なんです。裁判官は法律論で動きます。政権側の通したい法律論に無理があればあるほど、裁判官として任命できる人は限られてきます。

 たとえば集団的自衛権を合憲と言ってくれる裁判官を選ぼうとすると、誰がみても有名でない法学者とか、裁判官の経験が少ししかない人のように、相当不自然な形になる。そういう人選では、最高裁がねじまげた憲法解釈をしてしまうことになります。

 審査を使いこなすために大切なのは、シンプルに最高裁の裁判に興味を持つこと。全体の傾向が嫌だからと、全員にバツをつけても問題ありません。判決に反対意見を付けた人がいても、説得できなかったという点では全体の責任なのです。(社会部・下地由実子、デジタル部・與那覇里子)

 きむら・そうた 1980年横浜市生まれ。東京大法学部を卒業した2003年から、同大法学政治学研究科助手。06年から首都大学東京准教授。法科大学院の講義をまとめた著書「憲法の急所」は「東大生協で最も売れている本」と話題に。主な著書に「憲法の創造力」「テレビが伝えない憲法の話」。