アスベスト(石綿)は2012年から全面禁止となり、現在厳しく規制されていますが、以前は耐熱性、防火性、保温性、耐摩耗性、絶縁性、防音性などに優れているためさまざまな分野で使用されてきました。繊維状の鉱物であり、布状にも加工しやすく安価でもあるため建材、船舶、ボイラー、パイプ、自動車のブレーキ、電気絶縁など広く利用されました。本県では米軍基地関係も多いようです。

 しかしこの物質は顕微鏡レベルで確認し得る微細な繊維状構造からなっており、飛散すると容易に吸入され呼吸器に重大な病変をきたす事があります。

 病変は一般に、吸入された量と関連しますが、個体差があり吸入された人が全て障害をきたすわけではありません。また吸入後直ちに障害がおきるかというとそうではなく、長期の潜伏期間を経てから発症してきます。

 病変の種類には六つの疾病=胸膜プラーク、石綿肺、肺がん、中皮腫、びまん性胸膜肥厚、良性胸水があります。このうち重大な障害をきたす疾病は肺がん、中皮腫と、著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺とびまん性胸膜肥厚で、この四つの疾病は法律で救済措置の対象となっています。

 中でも比較的多く見られる疾病は肺がんです。多くは吸入暴露後10年以上経過してから発症します。アスベストに暴露された人の肺がん発生率は暴露のない人に比べ2倍高いとされています。さらにアスベスト暴露歴のある人で喫煙する人はアスベスト暴露歴なく喫煙歴もない方に比べて、肺がん発生リスクが数十倍も上がります。喫煙は厳禁です。中皮腫が発生する場合も一般に暴露後10年以上を経て発症します。石綿肺とびまん性胸膜肥厚は著しい呼吸機能障害を伴う場合に救済措置の対象となります。

 アスベストは1949年から輸入が再開され、70年から90年ごろまでは年間約30万トンも大量輸入され、広く使用されました。これらの年代ではアスベスト使用の規制が軽く、数十年たった現在アスベスト関連疾患の発症増加が懸念されます。アスベストの80%以上は建築関係で使用され、今後これらの年代に建てられた建築物の解体に伴うアスベスト対策も重要です。

 建築等での石綿製品の使用やその補修・解体作業、船舶や車や配電・ボイラー等の補修・解体作業、その他石綿を扱う作業をした人は近くの医療機関で定期的な呼吸器検診・健診・相談をお勧めします。(久場睦夫・国立病院機構沖縄病院)