「移設計画をこのまま進めることなく、わが国が世界に冠たる民主主義国家であるとの姿勢を示してほしい」

 就任後初となる県議会で所信を表明した翁長雄志知事は、米軍普天間飛行場の辺野古移設問題で政府の計画断念を迫った。

 沖縄に米軍基地が集中する現状を「異常」と表現。「日本の安全保障が大事であるならば、日本国民全体で考えるべきだ」と語り、今、ボールは政府の側にあるとした。

 所信表明は、前段で県民向けに県政運営の基本方針を語り、後段で政府へ向けたメッセージを発信するというものだった。米軍基地が沖縄経済発展の阻害要因との考えのもと、基地問題解決への決意をにじませた。

 翁長氏は、先の知事選挙で「辺野古に新基地は造らせない」を公約に、現職の仲井真弘多氏に10万票近い大差をつけて勝利した。逆の見方をすれば、ものすごい力を持つ政権党が必死になって応援した現職が大敗したのである。

 「新基地ノー」の民意は1月の名護市長選挙でも示され、もはや沖縄の多数意思であることは明白だ。

 なぜ政府は沖縄の民意に向き合わないのか、なぜ本土は沖縄の声を踏みにじるのか。翁長知事は、そう問い掛けている。

 県民は沖縄戦、それに続く米軍統治に苦しんできた。子孫の代まで被害が続く基地を造るのは、本土の安全・安心のために再び沖縄を「捨て石」にするようなものである。

 辺野古を沖縄問題と考える限り解はない。

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 翁長知事の就任を受け、普天間飛行場を抱える宜野湾市の佐喜真淳市長が「危険性の除去に取り組んでほしい」と記者会見で訴えた。

 危険性除去は県政の重要課題であり、その旗を降ろすわけにはいかない。

 しかし一方で、仲井真氏が安倍晋三首相と交わしたという普天間の5年以内運用停止はすでに破綻している。

 選挙戦で仲井真氏は「安倍首相が確約した」と繰り返したが、具体的な話はない。それどころか日本政府は米側に要請すらしていない。

 米側は普天間の返還を「早くて22年」としている。知事選前に突如浮上した案には不快感を示し、「空想のような見通し」と強い言葉で否定した。

 普天間の5年以内運用停止は空手形のようなものであり、むしろ辺野古移設計画を見直すことの方が危険性除去の近道である。

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 米国には「敵意に囲まれた基地は機能しない」という考え方がある。 

 対日政策に影響力のあるジョセフ・ナイ元米国防次官補も「沖縄の人々が辺野古への移設を支持するなら私も支持するが、支持しないならわれわれは再考しなければならない」と述べ、辺野古移設に慎重な考えを示している。(12月8日付朝日新聞)

 所信表明で翁長知事は「国内外に向けた働き掛けを行っていくことが基地負担軽減の実現につながる」と強調した。

 米側の動きを解決の手掛かりとしたい。