過去を知り、過ちを繰り返さぬよう今を生きる。歴史を学ぶ意義はそれに尽きるのではないか

▼加藤陽子東大教授の著書「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」(朝日出版社、2009年)は研究者が中高生と共に考えた集中講義の記録だ。日清・日露戦争から日中戦争、太平洋戦争まで戦争を繰り返した日本の近現代史を多くの資料を基にひもといていく

▼優秀な官僚や一人一人は善良な市民たちがなぜ破滅への道を突き進んだのか。無謀な政策がいかに正当化されていったのか。著者は「自分がその立場ならどうするか」と問い掛ける

▼戦争はある日突然始まったわけではない。人々は一方的に時代の波にのまれたのではなく、折々で主体的な選択を積み重ねていった結果が「戦争」だった。そんな冷徹な事実を突き付けられ、局面ごとの選択の重みを痛感する

▼師走の解散総選挙は自民党が大勝した。衆参両院で3分の2以上が賛成すれば憲法改正を発議できる。安倍晋三首相の視野には当然入っているだろう。選挙でほとんど争点にならなかったにもかかわらず、改憲が現実味を帯びることになる

▼戦争の放棄を誓った憲法9条をもしも捨て去ったら、未来の人々は賢明だったと評価するだろうか。投票して終わりではない。選択の行く末を監視し続ける責任が私たちにはある。(田嶋正雄)