6年前、議論になった県立病院の独立行政法人化は、県の財政難を理由に赤字の病院を民営化する方針だった。県は人件費の高さなど公立病院の高コスト体質が赤字の原因と指摘した

 ▼だがこれに県立病院関係者は異論を唱えた。彼らが主催したシンポジウムなどで県民につまびらかにされたのは救急、小児、産婦人科など県立病院が持つ診療科はもともと不採算である事実

 ▼患者が払う医療費と公的保険の報酬からなる病院収入が、診療にかかる費用を相殺しない医療制度の欠陥だ。であれば赤字は県民に医療を届けた結果だと知った人々は「県立病院を残すべきだ」と声をあげ、県は独法化を見送った

 ▼翻って今月17日政府は来年度予算を過去最高の98兆円とする方針を固めた。予算の半分近くは国債という借金であり財政赤字は深刻化必至。社会保障費の削減論議はさらに盛り上がるだろう

 ▼これに対し「(株)貧困大国アメリカ」(岩波書店)の著者、堤未果さんが先日ラジオ番組で安易な議論に警鐘を鳴らしていた。医療を商品化した米国は加入する民間保険会社の保険額によって受けることができる治療が異なる 

 ▼結果、医療は高コストとなり庶民に届かない。彼女の「社会保障制度は難しいけど住民がきちんと理解しなければ国にだまされる」の言葉が印象的だった。(黒島美奈子)