「外貨稼ぎですよ」。キューバの首都ハバナの公園や飲食店など街にあふれるサルサの生演奏に浸っていたら、憂いといら立ちをためた目の15歳の少年に冷や水を浴びせられた

 ▼流ちょうに日本語を繰るスペイン系キューバ人の外交官の息子だった。サトウキビ畑に土地の音楽、暑さしのぎで庭先にいすを持ち出して隣人と語らう姿は郷愁を誘い、すっかり魅せられていた

 ▼14年前、県人会の発足取材で訪れたときのことだ。先週、そのキューバと米国が国交正常化交渉を始めるというニュースが世界を駆け巡った。今も50年代のクラシックカーが現役というから、キューバ経済は一段と厳しいのだろう

 ▼県人会が政府のお墨付きをもらうことも、難しいようだった。県系人のお宅を訪ねて既に亡くなっている1世の戸籍を取り寄せ、一人一人の顔写真を政府に提出していた。親睦団体なのに厳密な沖縄系の証明が必要という仕組みはまったく解せなかった

 ▼時間がかかってでも政府認可を欲したのは、他国の県人会との派遣交流や自国に招待したいという素朴な目的のためだ。日系人会ができなかったのにやり通せたのは1世への思いや沖縄文化への誇り、継承からでもあった

 ▼交渉開始を機に美しいキューバが開かれ、民主主義の国へと連なることを願う。かの地に住む同胞のためにも。(与那嶺一枝)