「1点刻み」のペーパーテストで合否を判定する知識偏重の入試から、人物を多面的に総合評価する入試へ。

 中央教育審議会が大学入試改革案を下村博文文部科学相に答申した。実現すれば1979年に共通1次試験が導入されて以来の抜本改革となる。現在の小学6年生が大学受験を迎える2020年度からの実施を目指している。

 柱となるのは、現行の大学入試センター試験を廃止し、知識の活用力をみる「大学入学希望者学力評価テスト」の導入だ。記述式や、教科の枠組みを超えた「合教科・科目型」「総合型」の問題を盛り込むという。年に複数回実施し、成績は点数ではなく大まかな段階別に示される。

 各大学の個別試験は、集団討論や面接、小論文などで評価できるようにし、ペーパーテストの場合は記述式や論述式とする。

 併せて、高校在学中の学力到達度をみる「高校基礎学力テスト」を新たに導入する。高校2、3年生の時に年2回程度受けられるようにし、成績は進学や就職時の参考資料に活用できる、というものだ。

 少子化で「大学全入時代」を迎えた。AO入試などの広がりは、大学生の基礎学力や高校生の学習意欲の低下につながっていると指摘される。一方、難関大学も入試が知識偏重で国際的な評価が低いことが課題とされてきた。

 こうした中、改革の方向性は一定理解できる。ただ、子どもたちへの影響が大きいだけに綿密な制度設計と大学側への十分な支援が欠かせない。課題は山積で拙速は禁物だ。

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 例えば、新たな評価テストが重視する「思考力・判断力・表現力」は、抽象的で評価は容易ではない。いったいどのような問題で測るのか。

 「合教科・科目型」など新たな出題形式も具体的な内容は不明で、全国普通科高等学校長会のアンケートでは52%が反対を示した。

 大学の個別試験にしても、人物を多面的に総合評価すると言えば聞こえはいい。だが、公平・公正が求められる入試で、集団討論や面接、小論文により厳格な選抜を実施するのは、大学にとってかなりの負担だろう。

 高校基礎学力テストについては、高校生活がテスト対策に追われ、部活動や学校行事にしわ寄せがいく懸念が拭えない。「試験漬け」となった結果、主体的な学びが後回しにされるようでは本末転倒だ。

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 制度設計が中途半端なまま実施に踏み切れば、混乱を招き、受験生の不安や不満は増す。結局は受験スキルに頼り、指導の手厚い進学校や学習塾に通える環境の子らが有利となり、新たな格差を生まないか心配だ。

 下村文科相は先月、小中高校で学ぶ内容などを定める学習指導要領の全面改定を中教審に諮問した。今後、大学入試改革と並び議論が進む。

 1点刻みの入試からの脱却は理想だ。小中学校でも、全国学力テストで1点刻みの序列化に振り回されている現実がある。大学入試の改革は、小中学校教育にまで影響が及ぶ。幅広い議論を求めたい。