毎日の診察室の中で交わす会話の中で多いのが「家で血圧はいいのに先生が測るといつも上がる」という患者さんの言葉です。ある日のAさんの起床時血圧は収縮期血圧132、拡張期血圧83でした。4時間後の来院時血圧は血圧の薬を飲んだにもかかわらず収縮期血圧142、拡張期血圧67と収縮期血圧が上昇し、30分後の診察室血圧は収縮期血圧166、拡張期血圧98とさらに上昇し体のほてり感を伴っていました。

 これは高血圧患者さんが医師、看護師の白衣を見て自律神経系の交感神経が緊張し血圧が上昇する「白衣現象」と呼ばれる状態です。Aさんは若い頃に風邪で病院を受診し医師から「血圧が160/90と高いですよ」と言われて以後、その事が気に掛かるようになり血圧測定時には緊張感が高まり血圧が上昇するようです。

 また高血圧治療を受けていない人で、家庭血圧は正常だが外来診察時だけ高血圧(140/90以上)が認められる場合は「白衣高血圧」と診断されます。この場合はメタボリック症候群や糖尿病、慢性腎臓病等の基礎疾患や心血管系の合併症がなければ家庭血圧を記録しながら経過観察となります。

 この「血圧の変動」については24時間自由行動下血圧測定(ABPM)で1日の変動を把握出来ます。心臓は1日約10万回動いていますので10万個の血圧が存在するわけです。この10万回の血圧は一定の数値を呈することはありません。日常生活で血圧はたえず変動しています。例えば朝起床時血圧は高く、昼にピークになり夕方から夜、睡眠時は低下していきます。食事、歩行、電話、会議等の身体活動に伴い血圧が上昇し、約20の変動があります。個人差が大きく20以上の変化もあります。その際上昇した血圧が血管内壁を傷つけ出血あるいは梗塞を起こすことは容易に想像できます。

 ある冬の日、Bさんは朝トイレで力んで排便した際、途中で気分が悪くなり右半身がしびれてきた」と急いで外来受診しました。血圧は200/100と高く、頭部CTで脳出血がみられ入院治療となりました。このように血圧変動が心血管の合併症を起こす事があります。

 血圧変動を防ぐにはどうしたら良いでしょうか? まず自分の変動パターンを知ることです。そして血圧を上昇させる睡眠不足、過剰な塩分摂取、過剰な飲酒、排便時の力み、ストレス等に注意することが大切です。(仲田清剛 ちばなクリニック)