政府は、東京一極集中の是正や人口減少問題を克服する地方創生の長期ビジョンと2015年度から5カ年の具体策を示す総合戦略を閣議決定した。

 総合戦略には「5年間で地方に30万人分の若者の雇用を創出する」など多くの数値目標が掲げられているのが特徴だ。

 例えば東京一極集中是正策として「地方から東京圏への転入を6万人減らし、東京圏から地方への転出を4万人増やして、20年に地方・東京圏の転出入を均衡させる」という目標を掲げた。

 そのための具体策として、本社機能を地方へ移す企業への税制優遇措置、地方で就職する大学生の奨学金返済の減額-などを打ち出している。

 地方に安定的な雇用を生みだすことで定住を促進し、活性化につなげる-。施策に異論はない。しかし、国が作成したプランを上から目線で地方に押し付けることがあってはならない。

 自治体によって抱える課題は千差万別だ。地域の実情に即したものか慎重に見極めることが、実効性のある施策展開につながる。そのためには国と自治体の綿密な意思疎通が欠かせない。

 戦略では全ての自治体に15年度中の「地方版戦略」の策定を求めている。自治体の裁量で自由に使える新たな交付金制度も取り入れるが、政府方針に沿って策定した戦略の内容をチェックすることが交付の条件になっている。自治体の自由な発想が制約されないか疑問が残る。

    ■    ■

 長期ビジョンでは、女性が生涯に産む子どもの数を推計した合計特殊出生率が13年の1・43から30年に1・8、40年に2・07に上昇すれば、60年には目標とする人口1億人程度を維持できるとの見通しを示した。「人口減少を克服するため、若い世代が希望通り結婚、出産、子育てができる社会経済環境を実現する」と明記している。

 しかし、少子化の背景には、結婚や出産を希望しながら、保育施設の不足や雇用が不安定で収入が少ないなど、さまざまな事情でかなわない現実もある。内閣府の調査によると20~30代男性の既婚率は年収300万円を境に大きな差があるという。

 働く人の約4割が非正規という中、安倍政権は、企業の派遣労働者の受け入れ期間の制限をなくす労働者派遣法改正を目指している。総合戦略と矛盾する政策ではないのか。

    ■    ■

 沖縄県は、合計特殊出生率が全国一高く、人口増加率もトップクラスだ。それでも25年ごろの144万人をピークに人口減少に転じるとみられている。

 県は、独自の人口増プランを推進。移住活動応援事業の一環として、市町村の職員を対象に移住者受け入れのためのセミナーを行っている。

 移住政策に積極的に取り組む東村では、定住促進のための住宅を整備し移住者を受け入れている。

 自治体が自ら創意と情熱で魅力ある地域づくりを模索し、国が支える。地方創生はそこから始まる。