作家の立松和平さんは1981年、与那国町のサトウキビの刈り取りや製糖作業を手助けする援農隊に参加した。動機は「身体を動かして金を稼ぐという単純な自然の中に、もう一度自分を置きたかった」

▼自らの文学を労働や放浪や人間の当たり前に生きている場所から出ているとし、机に向かうだけの日々に「作家の生活への、危機感」があったという。与那国での生活をエッセー集『砂糖キビ畑のまれびと』(ちくま文庫)にまとめた

▼援農隊は過疎化に苦しむ与那国を助けようと、76年、元共同通信記者の藤野雅之さん(73)らが呼び掛け、始まった。地元農協の破産など困難を乗り越え、島に欠かせない存在になる

▼藤野さんがまとめた記録「与那国島サトウキビ刈り援農隊」(ニライ社)に人手不足解消とともに、沖縄の人々と一緒に働き、理解を深めることを目的としていることが記されている

▼藤野さんは与那国を「日本という国家のさまざまな矛盾が集約している」と指摘する。参加者は島での困難に直面することで自分を見つめ直し、離島の暮らしを考え、日本という国を問うたのだろう

▼集団派遣はことしを最後に終わる。島は陸上自衛隊配備計画で二分され、来月は住民投票が実施される。キビ刈りで苦労を共にした全国の仲間が島の選択に注目しているはずだ。(与那原良彦)