戦後70年、日韓国交正常化50年の節目に当たる今年は「歴史と政治」「歴史と外交」が深くからみあう年になりそうだ。歴史問題の扱いを間違えば日中、日韓関係の悪化は避けられない。それをどうやって防ぐかが東アジア外交の最大の課題である。

 昨年11月の日中首脳会談以降、3年ぶりに「新日中友好21世紀委員会」が開かれるなど、日中関係は徐々にではあるが、改善のきざしがほの見える。節目の年に、関係改善の機運を大切に育てていくことが重要だ。

 その前提となるのは、歴史問題に対する安倍晋三首相の姿勢が中韓両国にとって受け入れ可能なものかどうか、である。

 韓国の朴槿恵(パククネ)大統領は12日、ソウルの大統領府で記者会見し、旧日本軍の「従軍慰安婦」問題を念頭に、「日本の姿勢の変化が重要だ」と述べた。歴史問題では妥協しないとの考えを明確にしたのである。

 過去の植民地支配と侵略を認めた村山富市元首相の談話や、慰安婦問題に対する反省と謝罪を盛り込んだ河野洋平元官房長官の談話について、自民党の中には見直しを求める声が根強い。安倍首相自身も「侵略の定義は定まっていない」と語ったことがある。

 過去の植民地支配や侵略の歴史を正当化しても名誉回復にはつながらない。それは国内でしか通用しない内向きの姿勢だ。戦争と戦後の冷戦構造を清算し、東アジアに新たな地域秩序を形成するためには、過去と誠実に向き合い、漂流する歴史問題を着地させなければならない。

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 安倍首相は終戦記念日の8月15日に、戦後70年の首相談話を発表する予定だ。

 談話によって中韓との関係が改善する可能性がある半面、両国の国民感情を逆なでし、関係を悪化させるおそれもある。米国務省のサキ報道官がこれに反応したのは、安倍政権に対する米国側の懸念の表れにほかならない。

 サキ報道官は、村山談話や河野談話を「近隣諸国との関係を改善するための重要な区切りだった」と高く評価し、首相周辺の見直しの動きをけん制した。

 中国は昨年2月、9月3日を「抗日戦争勝利記念日」、12月13日を「南京大虐殺犠牲者国家追悼日」とすることを法律で定めた。ロシアと「反ファシズム・抗日戦争勝利70周年」の記念行事を共同開催することにも合意しており、韓国に対しても、共同行動を呼びかけている。

 歴史問題をめぐって「日本包囲網」が形成されるのは、日本外交にとって大きなマイナスである。

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 1985年に西ドイツ(当時)のワイツゼッカー大統領は「過去に目を閉ざす者は現在も見えなくなる」と語り、世界的な反響を呼んだ。

 終戦記念日の総理談話は、安倍政権がどこに向かおうとしているのかを知る手がかりになる。

 偏狭なナショナリズムによって過去を正当化すれば、歴史問題をめぐる「日本包囲網」に根拠を与え、日本の行く末を案じる空気が国際社会に広がるだろう。