日本世論調査会が5月下旬に実施した世論調査で、充実すべき社会保障分野に、子育て支援などの少子化対策を挙げた人が39%に上った。

 最も多かった回答は年金制度の58%だが、昨年3月の前回調査と比べ3ポイント減っている。逆に少子化対策は6ポイント増え4位から2位に浮上。20~30代の若い世代に限ると6割を超える高い数値だった。

 高齢者重視の社会保障政策への不満がのぞく結果である。

 アベノミクス「新三本の矢」の一つ、子育て支援で、安倍政権は「希望出生率1・8」を掲げている。合計特殊出生率を2025年度末までに1・8へ引き上げるという目標だ。

 子育て支援の充実に異論はない。参院選でも争点の一つにしてもらいたい。

 しかし財源の裏付けが乏しい政策と、現状との開きの大きい数値目標が、選挙向けのスローガンに終わらないか、危惧する。

 安倍晋三首相が消費増税の再延期を決めたことで、増収を見込んで計画された社会保障の充実が見通せなくなっている。

 「待機児童ゼロ」に向けた50万人分の保育の受け皿整備は本当に大丈夫なのか。税収全体が小さくなれば「1億総活躍プラン」の目玉である保育士の待遇改善も危うくなる。

 予定していた社会保障の充実をあいまいにしたまま、選挙を乗り切ろうというのはずるいやり方だ。

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 少子化の要因の一つとして注目したいのは「生涯未婚率」の上昇である。

 国立社会保障・人口問題研究所の資料によると、1985年に4%前後だった生涯未婚率は、2010年には男性20%、女性11%にまで跳ね上がっている。

 中でも沖縄の男性は4人に1人の25%に上り、東京に次ぐ高さだ。

 「結婚する」「結婚しない」は個人の選択の問題だが、非正規で働く男性の既婚率が正規を大きく下回るなど経済的理由が壁となっている側面を見過ごすわけにはいかない。

 出生率1・8は、若い世代が希望通りに結婚し、理想とする数の子どもをもって初めて達成される。

 子育て世代をターゲットにした支援策から、働き手の4割を占める非正規雇用対策へ、政策のすき間を埋めていく必要がある。

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 合計特殊出生率が戦後最低となった1990年の「1・57ショック」をきっかけに国は少子化対策の検討を始めた。「エンゼルプラン」以降、いくつもの計画が打ち出されたが、失敗続きである。

 最新の2015年の合計特殊出生率は1・46で、前年からわずかに上昇。だが死亡数が出生数を上回っているため人口減の流れは止まらない。もう小手先の対応では、どうにもならないところまで来ている。

 希望出生率1・8は聞こえのいい公約なのか、本気で取り組もうとしているのか。政策の実効性を問いたい。