オバマ米大統領は、年頭の一般教書演説を行った。演説時間の多くを割いたのは、国内の格差是正に向けた「中間層支援策」だった。

 富裕層への増税を財源とし、最低賃金の引き上げや勤労家庭の減税、短期大学の授業料無償化など、中間層の生活を向上させる施策の実現を訴えた。

 米国では経済や雇用は順調に回復しているが、労働者の賃金は上がらず、国民の多くが景気改善を実感していない。株式など金融資産を持つ富裕層と低・中所得者層の格差は深刻化している。

 2011年9月には、ウォール街で経済格差の解消や富裕層への課税強化を求めるオキュパイ(占拠)運動も起きるなど、格差拡大に対する国民の不満が高まっている。

 オバマ氏は演説で「わずかな人だけが得をする経済を受け入れるか、努力すれば収入が増え、機会が広がる経済を追求するのか」と述べ、国内の格差という現実に向き合う強い姿勢をみせた。

 格差の拡大は、米国だけの問題にとどまらない。

 国際NGOが、19日に発表した推計は驚きだ。世界の人口のわずか1%にあたる富裕層が、16年までに世界の富の半分以上を独占する見通しだ。NGO幹部は、各国首脳に対し格差問題への対応を呼び掛けるという。

 今回のオバマ氏の富裕層への増税案が成功すれば、格差問題に悩む他の先進国にも影響を与えるだろう。新たな経済政策のきっかけになることを期待したい。

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 格差の問題に対する人びとの関心は高まっている。フランスの経済学者、トマ・ピケティ氏が、膨大なデータを分析して格差問題を論じた著書「21世紀の資本」が、米国をはじめ、世界的ベストセラーになっている。

 資本主義のもとでは、資産を持つ人と持たない人との格差が広がり続け、富も貧困も世襲されていく-。ピケティ氏の指摘が多くの支持を集めている背景には、社会のさまざまな分野にひずみが出ている現実がある。

 富の偏りと貧困は、機会や教育の不平等を招き、社会不安を引き起こす。努力や才能を生かす機会を奪われた若者は、不満のはけ口を求める。欧州で起きている移民排斥の動きや極右政党の台頭、イスラム過激派などテロの温床になっているとの指摘は、その現れだろう。

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 翻って日本はどうか。

 安倍政権下で進んだ株高で、金融資産を持つ富裕層には恩恵が及んだ。一方で、過去最悪の子どもの貧困率や非正規労働者の比率が4割近くに達するなど、格差の拡大が進み、社会的な課題になっている。

 大企業と富裕層を優遇するアベノミクスが目指すのは、富める者がさらに潤えば、富はしたたり落ちるように浸透していくという「トリクルダウン」効果である。

 しかし、地方や家計に、その効果が及んでいるとは言えない。低所得者層への再分配策と働く人たちの賃金を引き上げ、消費を拡大することが求められる。