前回のレポートにおいて、沖縄地域は全国よりも給与が低い一方で、働く時間も長いというデータを示し、その状況の改善のためには、労働生産性の向上が重要であると指摘しました(前回の記事はこちら)。労働時間の長さというのは社員の健康管理に影響を及ぼすため、重要なテーマのひとつです。政府も長時間労働の是正に向け各種取り組みを強化しつつあります。今回は、県内労働者の労働時間の現状と課題、そして改善に向けた視点を整理してみたいと思います。

表1:県内の多くの産業で長時間労働が続く

表2:労働時間は男女で差が大きい

表3:週60時間以上就業している者の割合

表4:雇用形態別、性別、男女別の1週間で60時間以上就業している者の割合

表1:県内の多くの産業で長時間労働が続く 表2:労働時間は男女で差が大きい 表3:週60時間以上就業している者の割合 表4:雇用形態別、性別、男女別の1週間で60時間以上就業している者の割合

■残業代がゼロになる!?

 昨年の通常国会から継続審議となっている労働基準法改正法案は、労働者の今後の働き方に大きな影響を与えるさまざまな制度が盛り込まれています。同改正案の論点は多岐にわたりますが、労働時間との関連でいえば、「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の創設」が特に注目されます。同制度は、各種の条件を満たせば、少なくとも年収1000万円以上でなおかつ高度な専門的知識を必要とする業務に従事している労働者については、労働時間規制の適用を除外できるようになるという仕組みです。

 賛成派は、同制度を導入することで、労働者が創造的な能力を発揮しながら効率的に働くことができるようになると主張しています。一方、反対派は、労働時間規制が適用されなくなることで、長時間労働が助長され、なおかつ「残業代がゼロになる」と強く批判しています。

 個人的には、ほかの多くの働き方の仕組みが変わらないかぎり、同法案が改正されるだけでは長時間労働の抑制にはつながらないと思っています。しかし、現在のように特にホワイトカラーの正社員に関しては、給与と労働時間が密接に結びついている仕組みも問題だと思っています。ダラダラと残業をしている社員に残業代が支払われてしまうような状況は、経営者の方々だけでなく、効率よく仕事をして定時に帰る社員のモチベーションにも悪影響をおよぼすのではないでしょうか。

※ただ、同法案は、今国会においても審議入りすらできない見通しとされており(沖縄タイムス・2016年5月9日)、予定されている会期末の6月1日までに成立する見込みは低い状況です。

 残業代がゼロになるから反対という主張は、現状、長時間働かされているんだから、せめてその分の賃金は支払うべきだ、ということだと思います。しかし、そこれだけを強調し過ぎると長時間労働を前提に議論されているように感じます。働き方(=長時間労働)は簡単には変えられない、だから、少なくとも給与はしっかり払え、という論理です。

 しかし、労働時間は、人々の健康に関わってくる問題です。長時間働いて、給与がもらえたとしても、それで体調を崩してしまったら元も子もありません。つまり、「いのち」の問題なのです。沖縄の労働の現状がはたしてこうした視点を持ち得ているか、検証してみたいと思います。

■多くの産業で年2000時間超の労働

 実際の県内の労働時間はどうなっているのでしょうか。2015年の県内労働者の総労働時間は、一般労働者はが2025.6時間で全国平均と同じですが、パート労働者は1216.8時間で全国平均の1033.2時間を大幅に上回っています(毎月勤労統計調査より算出)。

 産業別では、年2000時間を超過しているのは県内に10業種もあります。最も多いのは「宿泊業、飲食サービス業」の2190.0時間となっています。一方、従業者1人あたりの給与総額は、ほとんどの産業において全国平均を大きく下回っている状況です。

 当然のことではありますが、労働時間が長いからといって、給与が高くなるわけではありません。労働者の立場からすれば、長時間労働をしているにもかかわらず、給与に反映されない点を不満に思うかもしれませんが、利益率の高い生産性のある業務を行わなければ、民間の営利企業である以上、給与に反映することは難しいといえます。つまり、労働時間が長いという理由だけで給与が上がる、ということはないのです。