最近、『沖縄のデザインマンホール図鑑』という本を作った。著者の仲宗根幸男さんは、趣味の写真撮影であちらこちら歩いているうちにマンホールに興味を持つようになり、離島を含めて35市町村にある、(だいたい)すべてのデザインマンホールの撮影に成功、それぞれに解説をつけて図鑑として発行したのである。なぜ35市町村かというと、現在、下水道のない地域には下水マンホールも存在しないから。
 著者がこの本を出した大きな目的のひとつが、「沖縄の下水道接続にいくばくかでも寄与すること」だという。下水道は接続されるものかと、ちょっとだけ驚いた。知らない世界への入り口がわたしたちの足元にはあったのだ。

「沖縄のデザインマンホール図鑑」の表紙

留守番中のウララの帳場から見た風景

「沖縄のデザインマンホール図鑑」の表紙 留守番中のウララの帳場から見た風景

 とても好ましい一冊に仕上がったと自負している。さあ、下を向いて歩こう!

 「三畳の帳場から眺める、日々の切れはしを綴った、著者初めてのエッセイ集」と銘打った『那覇の市場で古本屋』という本がある。日本一大きな新刊書店から、日本一狭い古本屋になった宇田智子さんの初めての著書で、2013年にボーダーインクから刊行した。

 そんな宇田さんの店「市場の古本屋ウララ」で、週一回、店番を務めることになった。何かと面白いことが好きなボーダーインクの人たちが、三畳の帳場に座って、自分の仕事をしながら本を売っている。

 ということで、毎週水曜は「那覇の市場でお留守番」だ。

 ボーダーインクはスタッフそれぞれが「何でも屋」である。わたしも編集者だけど、編集をするだけではない。本を抱えて売りに行くこともあるし、ポスターも作ればイベント運営もして、お金の計算もたまにやる。だけど、本屋の売り場のことは、売り場でしか分からないものだなあ、と思う。

 自分が手がけた思い入れのある本ではなく、えっと驚くような本が何冊も売れたりする。自社本が目の前で売れたときは、ついお礼の言葉にも熱がこもってしまう。言いそびれた「とても嬉しいです」という一言が、そのまま胸の中をじっとあたためていく。

 売り場の感動は、売り場でしか味わえない。

 ウララのある市場中央通りにもマンホールがあって、留守番の日にはいつも足元を見つめながら店へと向かう。デザインマンホールには必ずといっていいほどそれぞれの地域の名所や名産品が描かれている。この近所にある「壺屋のうふシーサー」も図柄として使われているし、全国で初めてデザインマンホールが作られたのも那覇で、昭和52年のことだと著者からは教えてもらった。何かに没頭している人はみんな少年のような笑顔をする。沖縄の本を作ることができてよかったと思う。

 外国から来たお客さんや、観光客や、地元の人、知り合いまで、市場にはさまざまな人が歩いている。自分で作った本を売り場に並べて、誰かが手に取るのを期待しながら澄ました顔で座っている。

 帳場の低い椅子から、足元を見つめて初めて味わえるものがある。那覇の市場でお留守番は、とても幸せな時間だ。