大接戦が予想される宜野湾市長選は終盤を迎え、国政選挙なみの熱を帯びている。メディアが指摘するように、辺野古新基地問題で激しく対立する安倍政権と翁長沖縄県知事の「代理戦争」そのままの構図といっていい。 

宜野湾市長選が告示され、普天間飛行場のフェンス沿いに設置された掲示板

米軍普天間飛行場

宜野湾市長選が告示され、普天間飛行場のフェンス沿いに設置された掲示板 米軍普天間飛行場

 なにやら肝心の市民が置いてきぼりを食ったような選挙にも思えるが、地元2紙が実施した世論調査によると、市民が投票の際に重視する最大のポイントは「普天間飛行場の移設問題」とあり、争点ははっきりと絞られている。 

 両候補者も基本政策や重点政策に「普天間飛行場の返還」を掲げていることから、本来なら、「返還」に向けた取り組みや手法について、白熱した議論が展開されるはずだった。しかし、実際はそうはならず、争点は宙に浮いたままである。 

 自民党と公明党が推薦する現職の佐喜真淳氏が「固定化の阻止」「危険性の除去」を繰り返すのみで、移設先の辺野古の賛否について態度を明らかにしていないためである。 

 一方のオール沖縄が推す新人の志村恵一郎氏は「県内移設反対」を鮮明に掲げ、県と市が協力して普天間飛行場の早期閉鎖に取り組むとしている。しかし、返還・閉鎖のための具体的な方策は今ひとつ見えてこない。 

 市民にとってわかりにくい選挙になったのではないか。わかりにくいといえば、政府と前知事が約束した5年以内の普天間基地の運用停止の実現に向けてどう取り組むのか、これも曖昧模糊としている。 

 政府からこの言質を引き出したのは大きい。辺野古の新基地工事は完成まで10年から15年かかるとみられるが、普天間の危険性を除去する方法は「移設」によらなくても早急に実現できると認めたからだ。 

 したがって、今回の市長選では政府の約束を確実に履行させるための政治環境の整備と跡地利用の構想について、両者は沸騰するような議論を戦わせ、その本気度を政府に提示すべきであった。 

 その跡地利用ついて、佐喜真氏はディズニーリゾートの誘致をぶちあげ、志村氏はマリンレジャーのメッカを目指すオーシャンフロント・リゾートの建設を提唱している。ほかにも自然を生かした公園や物流・商業施設の整備などを挙げているが、奇しくも両氏とも普天間の跡地に沖縄本島を一望できる高層ランドマークタワーを建設することで一致している。 

 佐喜真氏のディズニーランド構想については、メディアの報道が錯綜したために、あたかも普天間基地の跡地に「夢の国」がやってくるとイメージしている人たちも多いようだが、これは正確ではない。 

 物議を醸している案件はディズニーブランドのリゾートホテルで、「ランド」ではない。実はこのホテルの誘致も雲をつかむような話であることがわかってきた。 

 東京ディズニーリゾートを運営する株式会社オリエンタルランドが昨年の12月9日に発表ししたプレスリリースで、「本件は当社として今後慎重に検討を行っていくものであり、現時点で対応方針など決定している事実は一切ありません」と述べているからだ。 

 また、沖縄タイムスの取材に対しても、オリエンタルランドは、「具体的な計画については白紙。現段階で話せることはない」とコメントしている。 

 繰り返すようだが、この選挙を通して本気で考えるべきは、米軍によって奪い取られた土地の跡地利用として、最もふさわしい将来構想は何かということである。ところが、両陣営とも跡地利用については聞こえのいい施設の建設や整備ばかりで、目新しいものはない。 

 あらためて問うのだが、ディズニーを誘致したり、高層タワーを建設したりしたところで、宜野湾市の豊かな未来を引き寄せる選択肢が生まれるのだろうか。