本連載の出典となった沖縄県産本ネットワークの「沖縄県産本のあゆみ」が書かれたのは2004年のこと。それ以降については、このタイムス×クロスで掲載するにあたって追加執筆しており、今回分も2010年〜現在までを書き下ろした。きわめて最近のことで新たな知見や歴史的意義は見当たらないかもしれないが、文章にして残しておくことで、いずれ、何かの/誰かの役に立つ可能性はある。そうした願いのようなものを込めて掲載したことをお断りしておく。なお前回までの出典については第1回の冒頭で詳述しているので参照されたい。

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目からウロコの琉球・沖縄史

報道圧力 沖縄・米軍基地データブック 越境広場 N27 おばぁタイムス 八重山の戦争 竹富方言辞典 那覇の市場で古本屋 興南 熱闘の足跡 うちな 消えた琉球競馬 目からウロコの琉球・沖縄史

 集団的自衛権の行使容認、特定秘密保護法、安保法制の成立など、2010年代に日本全国を覆った政治的激動は、多くの人にとって忘れがたい衝撃的なものになった。個人の自由決定権を否定しつつ国の右傾化へかじを切る政治中枢にリードされながら、反「市民運動」、反「リベラル」傾向が市民レベルでも生まれていき、社会運動への攻撃、差別煽動、そして歴史改ざんといった事態が燎原の火のごとく広がっていったのである。個々人の政治的な主義主張を別にしても、《沖縄》で生きる者と沖縄戦・基地問題を切り離すことはできない。全国的に辺野古新基地建設が取りざたされる状況のもと、沖縄戦や基地問題に対しても、歴史改ざんや反「市民運動」、さらには《沖縄》そのものの否定という歓迎されざる事態も勃興していった。この時代には反《沖縄》本とでも呼ぶべき本がおもに県外から多数出版されている。硬直化した沖縄社会への正当な批判もあれば、デマまがいの本も存在したが、こうした書籍が沖縄の書店でもランキング上位を占めたことは記憶に新しい。

 事態に真っ向から反対したのはやはり地元新聞社であった。沖縄タイムス社は『基地で働く 軍作業員の戦後』(沖縄タイムス中部支社編集部編、2013年)のほか、ブックレット『2014 沖縄知事選ドキュメント』(2014年)、『沖縄の「岐路」 歴史を掘る 未来を開く』『報道圧力 時代を読む/沖縄の声とどける』(いずれも2015年)などを立て続けに発行した。琉球新報社は中高生が戦争体験者の証言を聞き取った『未来に伝える沖縄戦』をシリーズで刊行、いずれも新聞の好評企画をまとめるという実直で時宜を得た出版を続けている。

 また、「ひとり出版社」の沖縄探見社は2010年の『沖縄・米軍基地データブック』(高橋哲朗)に続いて、『いかに「基地の島」はつくられたか』(2013年、沖縄探見社編)『データで読む沖縄の基地負担』(2015年、同)を会社の規模に比してハイペースで刊行、榕樹書林の『沖縄戦関係古書籍目録(附・戦時関係資料、日本の戦争)』(2015年)はパンフレット形式の目録ながら、沖縄戦の基礎的文献の入り口として高い評価を集めている。

 さらに、オピニオン誌が全国的に不調の中にあって、『越境広場』(越境広場編集委員会、創刊0号は2015年)や、6月23日を創刊日にした『時の眼―沖縄・批評誌 N27』(同実行委員会編、 新星出版、創刊号は2013年)の発刊など、継続的な言論・議論へ向けた足場固めも行われている。こうした出版活動はいずれも、沖縄戦・基地問題をめぐる状況への危機感が如実に反映されたものと言えるだろう。