本連載の出典となった沖縄県産本ネットワークの「沖縄県産本のあゆみ」が書かれたのは2004年のこと。それ以降については、このタイムス×クロスで掲載するにあたって追加執筆しており、今回分も2010年〜現在までを書き下ろした。きわめて最近のことで新たな知見や歴史的意義は見当たらないかもしれないが、文章にして残しておくことで、いずれ、何かの/誰かの役に立つ可能性はある。そうした願いのようなものを込めて掲載したことをお断りしておく。なお前回までの出典については第1回の冒頭で詳述しているので参照されたい。

●甲子園、もうひとつの“熱い闘い”

 県民挙げての熱狂を巻き起こした沖縄尚学高校のセンバツ優勝(2008年。1999年以来2度目)、そして興南高校による春夏連覇での県勢初優勝(2010年)は、県内出版界へも飛び火した。取材力と素材にまさる新聞社が熱い出版の闘いを繰り広げたのである。

 2008年センバツで沖縄タイムスは『栄光への軌跡─沖縄尚学、感動の春ふたたび』を、琉球新報は『感動 再び 沖尚全国制覇』を刊行。その2年後の2010年センバツで、のちに沖縄高校球史で最大のフィーバーを巻き起こすこととなる興南高校が優勝を果たしたとき、沖縄タイムスは『興南 熱闘の足跡─旋風再び 初の全国制覇』、琉球新報は『興南全国初制覇―2010年第82回選抜高校野球大会』を刊行した。沖縄の高校球児が強くなればなるほどこの手の本はヒットしていくが、そういった点でもピークに達したのは、やはり同年夏の甲子園、興南高校による春夏連覇での初優勝に間違いないだろう。沖縄タイムスは『春夏連覇!!―興南偉業の足跡 深紅の大旗海を渡る』を、琉球新報『興南春夏連覇―夏の甲子園第92回全国高校野球選手権大会』を刊行し、いずれの本も大ヒットとなった。甲子園の“もうひとつの闘い”は、売れ行き競争もさることながら、刊行日の早さや盛り上げ具合までもが県民の注目を集めるなど、ある種、沖縄の甲子園フィーバーの一翼を担っているとも言える。

●『おきなわいちば』『うちな』など雑誌の健闘

 「沖縄ブーム」の終焉、そして全国的な雑誌の売れ行き不振によって、2000年代中頃から多数の雑誌が休刊の憂き目に遭ってきた。しかしそのような中で、『momoto』(東洋企画印刷、2008年創刊、のちに『モモト』表記に)、2008年にリニューアルした『おきなわいちば』(光文堂コミュニケーションズ。創刊は『沖縄市場』として2003年に光文堂印刷)、そして2013年に創刊準備号を出し、2015年11月までに第16号を数える『うちな』(沖縄教販)などといった雑誌の健闘ぶりが目を引く。沖縄の歴史・文化にまつわる硬軟とりまぜた記事、美しいビジュアル、取材力への評価がきわめて高く、いずれも印刷や流通業を母体としており営業力の高さも存分に生かされている。ちなみに『うちな』の沖縄教販は2015年に「沖縄の猫」をテーマとした県内初の猫専門雑誌『うちにゃ』も刊行している。

●新報活動賞に「出版・文化部門」創設

 「一隅を守り 千里を照らす」を基本理念に、社会の一線で活躍する個人や団体を顕彰する「琉球新報活動賞」は、2013年度の第36回から、琉球新報社創刊120年を記念して出版・文化部門、地域振興部門を新設した。初めてこの出版・文化部門を受賞者したのはボーダーインク。同社の宮城正勝社長は受賞あいさつで、「会社設立から24年、その間に街から書店がたくさん消えていった。このような状況の中で出版・文化部門が創設されたことは、書店・古書店・印刷所・出版社にとってどれだけ励みになるか分からない」と語っている。翌年の受賞者は榕樹書林。琉球・沖縄の歴史・民俗、空手など多岐にわたる出版と貴重書の復刻、琉球関係古書の入手などといった地道な活動が評価された。

 このほか、沖縄関係の出版物を顕彰する賞としては、沖縄県内書店が主催する沖縄書店大賞、沖縄タイムス出版文化賞(2015年で第36回)、同じくタイムス主催の伊波普猷賞(同43回)がある。タイムス主催の2賞を、2010年代の直近5年間で受賞した県産本発行元は以下の通り。
 出版文化賞=榕樹書林(2回)・南山舎・ボーダーインク・南方新社。
 伊波普猷賞=榕樹書林(2回)・沖縄タイムス社(2回)。