「再編関連特別地域支援事業補助金」の仕組みが発表された。「航空機40機、人員千人以上増える施設が所在する地域の地縁団体」は、日米交流に関する事業、住民の生活の安全に関する事業、生活環境の整備に関する事業について、補助金を受給できるという。

 中谷元防衛大臣は11月27日の記者会見で、今回の補助金の目的に関連し、「米軍再編による住民の生活の安定に及ぼす影響の増加に特に配慮をする必要があると認められる防衛施設の周辺の地域」について「地元の住民の要望を踏まえた、よりきめ細やかな対策が必要」との認識を示した。しかし、この説明には重大な疑問がある。

■賛成の口実か

 まず、「既存」施設も「新設」施設も、住民生活に影響があったり、日米交流事業をやったりしている点で変わりはない。また、辺野古の北に位置する地域などは、久辺3区に含まれないが、同程度の影響を受ける可能性もあろう。政府の主張する補助金対象地域の設定はあまりにも恣意(しい)的で、憲法14条の保障する平等原則に反するように思われる。

 また、一口に周辺住民といっても、各住民によって要望は異なるはずだ。「きめ細やかな対策」をするなら、個人を対象とすべきだろう。もちろん、個々の対応は困難なので、集団として意見を集約してほしいというのも理解できる。しかしそれならば、地縁団体ではなく、これまでの補助金と同様に、地方公共団体である名護市を対象とし、とりまとめを委ねるべきだろう。

 今回の補助金は、平等原則と、「名護市」という基礎的自治体の自治権の重要性を無視するもので、あまりにも不合理だ。補助金の受け取りをもって地元住民が賛成したという口実にしようとしているのではないか、名護市の民意を分断するために策を弄(ろう)したのではないかと批判されるのもやむをえないだろう。

■国会議論なく

 では、なぜこのような不合理な制度ができあがってしまったのか。私は、この補助金制度が、国会による新たな法律を制定することなく、政府の判断で構築されたことに注目している。

 政府が自らの政策を実現したがるのは当然だから、政府内部の判断だけで制度を設計すれば、問題点を十分に洗い出せるはずがない。国会で議論することの意義は、多様な視点から制度の合理性をチェックすることにある。

 野党の厳しい追及があるからこそ、政府・与党は、憲法をはじめとしたもろもろの法原則に照らし、穴のない制度を設計しようと努力する。反対意見に耳を傾けない政府は、堕落するだろう。さらに、政府が耳を傾けるべきは、野党のみではない。地元住民の意見も重要だ。

 再三述べてきたことだが、これを実現するには、米軍基地設置について個別の根拠法を制定し、憲法95条に基づく住民投票の手続きを経るしかない。こうした本来あるべき手続きを避けている限り、政府は小手先のごまかしを続けることになるだろう。そして、国民の不信感はますます強まるだろう。

 辺野古新基地建設の正当性を本気で信じているなら、正々堂々と国会でそれを示せばよいだけだ。(首都大学東京准教授、憲法学者)(記事と写真の転載、複写を固く禁じます)

※「木村草太の憲法の新手(しんて)」は、本紙第1・3日曜日に掲載。