沖縄の高校2年生が9月、起業した。昭和薬科大学付属高校に通う下村光彦さん(16)だ。設立したジェントリズムは、日々の生活に潜む非効率なものを最適化する株式会社。CTOとして迎い入れた琉球大学3年の金城廣太さんとソフトウエア、ハードウエアの開発などを手がけていく。

考えたことをすぐメモできるように、常に白紙を持ち歩いている

起業したGentlismのホームページ

自宅だけでなく、カフェで仕事をすることも多い

同級生が部活をしている間、仕事に励んでいるという下村光彦さん

考えたことをすぐメモできるように、常に白紙を持ち歩いている 起業したGentlismのホームページ 自宅だけでなく、カフェで仕事をすることも多い 同級生が部活をしている間、仕事に励んでいるという下村光彦さん

 なぜ、起業することになったのか。起業のメリット、デメリット、今後のビジョンについて聞いた。(聞き手・與那覇里子)

-中学3年、独学でアプリ開発

中学3年の初めごろ、SonyのPS Vitaを購入しました。

当然、ゲームを楽しむために購入したのですが、PS Vitaには、「メモ」アプリがあらかじめインストールされていませんでした。ゲームのポイントやクリアするために必要なことを記録するためには、紙に書かなければなりません。不便に感じ、解決策はないかと考えていました。そこで目を付けたのがPS VitaにあったPSM(PlayStation®Mobile)というインディーズのゲームコーナーです(サービスは今年9月に終了)。

小学生のころから、ロボットコンテストに参加してきたこともあり、プログラミングにも興味がありました。ちょうどいい機会なので、メモアプリを作るためにプログラミングの勉強を始めました。全く知識がなかったので、インターネット上の情報を頼りに、一から独学で勉強しました。もちろん、最初はほとんど理解できませんでしたが、勉強していくうち、少しずつ分かるようになっていきました。

そして、人生初の成果物となったメモアプリ。いざPSMでリリースしてみると、2014年夏頃までに50万円弱の売り上げがありました。とても嬉しくて、次第にプログラミングにはまり、弾幕シューティングゲームといわれるジャンルのゲームも作れるようになりました。


-人生を変えたRyukyufrogs

高校1年の時、Ryukyufrogs(琉球フロッグス)に参加しました。(※琉球フロッグスとは、未来を担うビジネスリーダーを育成するプログラムで、シリコンバレーでの研修をはじめ、自分でサービスを生み出すためにチャレンジをしていく)

琉球フロッグスでは、最先端の技術を開発するエンジニアや大企業で活躍する方々と話す機会に恵まれ、素直に感動しました。ハードな仕事にもかかわらず、楽しそうで、生き生きしていたからです。それまで、周りの大人から感じていたのは、仕事はつらいということ。医者を目指していましたが、大きな衝撃を受け、きつい仕事だからこそ、やりたい仕事をやろうとエンジニアになることを決めました。

 この活動中には、「BuyBy(バイバイ)」というサービスも開発していました。BuyByは、日々のちょっとした買い物を「最適化」するサービスです。

例えば、買い物から帰ってきてすぐに、自宅の牛乳がほとんどないことに気づいたとか、消しゴムを使い切ったから買いに行かないといけないとか、そういった小さな買い物のためにわざわざ買い物に行くのはとても面倒ですし、行ったら行ったで、余計なものを買ってしまうため、経済的にも負担です。

そこで、BuyByでは、近所にも買い物に行く方は大勢いらっしゃるわけですから、そういった方に自分の欲しいものをついでに買ってきてもらおうという「買い物代行」サービスです。

依頼人は商品代+代行手数料を代行してくれる人に支払います。代行人は普段通りに買い物して、依頼された商品を届けるだけです。近所の人同士なので、どこに住んでいるのかは分かっていますし、何より、宅配の手間がさほどかかりません。

また、二次的な効果として、地域コミュニティーの活性化にもつながるのではないかと考えています。日ごろから近所の方と交流する機会はなかなかありません。そこで、このBuyByを通して、新たなコミュニティーが形成されることを願っています。

 しかし、サービスは未完成のため、今後も開発を進めていきます。


-起業したのは、信用のため

BuyByはC2C(Consumer to Consumer)です。サービス提供者側の信用が大きく問われます。そこで、法人化することで信用問題を補完させようと考え、起業に至りました。私は、サービスによってできるだけ多くの人を幸せにすることを目的としています。そのためにもやらざるを得なかったので起業しました。

そして、琉球フロッグスの先輩である金城廣太さんを会社に迎え入れました。とても優秀なエンジニアで、いつか一緒に何かを作りたいと思っていました。色々なイベントでお会いする機会もあり、話しをしていくうち、パートナーはこの人しかいないなと思い、声をかけました。

日々の業務は、プロダクトの開発に時間を割いていて、8割がコーディング、残りが事務処理です。平日は1日4時間程度、休日は1日中開発をしています。

 BuyByでは、(1)代行者が買い物に行く(2)代行者が代行モードをオンにする(3)「オン」の情報がデータベースに保存される(4)依頼者は近所で代行者を探すというようなフローを書いていて、それを形にしていく作業をしています。GPSの動きや、代行者の探し方など、どんな人でも分かりやすく、使いやすいサービスにするために、プログラムの修正を繰り返しています。

私の考える起業のメリットは、資金を集めやすくなるという点もありますが、やはり一番は信用力の上昇にあると思います。

実をいうと私はあまり起業を推進するタイプではありません。なぜなら、起業にはお金がかかりますし、何より余計な事務作業に膨大な時間がかかってしまいます。それによって本業に割く時間が短くなり、サービスの質が低下してしまうようなことになれば元も子もありません。

私は起業する明確な理由と目的がなければ起業しないことをお勧めします。