名護市辺野古へ米海兵隊普天間飛行場を移設する計画で、埋め立て承認を取り消した翁長雄志知事を相手に政府は福岡高裁那覇支部に代執行訴訟を起こしました。埋め立て事業の合理性はない、と翁長知事は主張していますが、国は「それは国が判断するもので、地方はそれに従うだけだ」と言わんばかりの強権的な論理を展開しています。

トゥーラン米太平洋海兵隊司令官(右)と握手を交わす菅義偉官房長官=2015年10月30日、ホテル・ニッコー・グアム(沖縄タイムス社提供)

尖閣諸島=2005年5月(沖縄タイムス社提供)

尖閣上陸で逮捕され、沖縄県警の捜査員に連行される中国人活動家ら=2004年3月25日、那覇新港ふ頭(沖縄タイムス社提供)

尖閣警備強化で配備された海上保安庁の巡視船かびら=2014年12月、石垣港(沖縄タイムス社提供)

トゥーラン米太平洋海兵隊司令官(右)と握手を交わす菅義偉官房長官=2015年10月30日、ホテル・ニッコー・グアム(沖縄タイムス社提供) 尖閣諸島=2005年5月(沖縄タイムス社提供) 尖閣上陸で逮捕され、沖縄県警の捜査員に連行される中国人活動家ら=2004年3月25日、那覇新港ふ頭(沖縄タイムス社提供) 尖閣警備強化で配備された海上保安庁の巡視船かびら=2014年12月、石垣港(沖縄タイムス社提供)

 国はこう主張しています(いつも同じ議論で新味はありません)。 
 周辺国の軍事拡張に対応しつつ安全保障を確かにするには米軍が日本国内に駐留し、抑止力を維持することが極めて重要だ。沖縄は南西諸島のほぼ中央にあり、極東の潜在的紛争地域から「近いまたは近すぎない」位置にあり、シーレーンにも近く、日本の安保上の戦略的見地から地理的優位性を有している。その沖縄に即応力、機動性に富む海兵隊がひとかたまりで駐留することが日本の防衛だけでなく、アジア太平洋全体の平和と安定に不可欠である。

 こうした検討を行えるのは国以外にはない。従って、沖縄県が普天間飛行場の県外、国外移転を主張することは論外である。地方自治体が事業合理性を判断する能力はないため、知事は政府が指定した辺野古における埋め立ての可否を判断すればいい。これらの条件下で普天間の危険性を除去するために辺野古移転が唯一の解決策であり、その実現が最大の公益である。

 ここからは筆者の反論です。

 抑止力の維持、地理的優位性はいずれも根拠が乏しいのです。そもそもここで議論される抑止力は「米海兵隊」を指しています。他国軍の抑止力を日本が勝手に維持するとか、強化すると主張する自体、議論が倒錯しています。

 抑止力は(1)意思(2)能力(3)抑止する相手の合理的判断―の3要件で規定されます。領土侵害などには毅然と立ち向かい、相手に対して徹底的な報復を与えるという意思を絶えず表明していなければ、権益は守れません。報復を与える能力がなければ、相手になめられてしまうので抑止は効きません。さらにその意思と能力を相手が十分に理解し、合理的な判断をしてくれなければ抑止はまったく意味をなしません(分別のない幼子が泣くのを止めるのに威嚇しては逆効果です)。 

 例えば尖閣諸島を中国から守るため、地理的に近い沖縄に海兵隊を駐留させることが不可欠だ、という議論があります。米国が尖閣を死ぬ気で守るという意思を絶えず表明し、実行できる能力を持ち、中国もそのメッセージと米軍の実力をちゃんと理解して合理的は判断をしてくれたときに初めて抑止は効いている、と言えるわけです。米国は果たして小さな無人島を守ることを自国の利益と考え、若い兵士らの命をかけてでも軍事的な行動を起こしてくれるのでしょうか。もし読者がアメリカ国民だとしたらそのような戦闘を支持しますか。