働きたい障がい者が仕事を探す場合には、生活訓練や就労訓練などの様々なサービスがあり、ハローワークには専門の窓口も設置され、就職後もフォローする仕組みがある。しかし、若者にはサービスも窓口もほとんど用意されていないのである。そしてその背景には、若者が「ニート化する」「ひきこもる」ことに対する自己責任論が常にあるように感じている。「働けない」のではなく「働かない」を前提に、若者は「甘えている」「やる気がない」「家族の養育に問題がある」などと、当事者参照や家族の「自己責任」としてきた結果、これら若者の社会漂流を生んでいるのではないだろうか。

 ここで大阪のある自治体の新しい取り組みを紹介したい。この自治体は5万人規模の都市だが、その内容は、
1 小中学校の連携強化を図る
2 それぞれの教育現場で気になる子どもを発見する
3 発見した子どもについては学校だけで抱えず、市や府の機関と連携する
4 連携機関で子どもやその家庭を総合的に支えていく

 という仕組み作りだ。昨年策定された政府の「子どもの貧困に関する大綱」には、「学校をプラットフォームとした総合的な子どもの貧困対策の展開」と記されているが、まさにこの自治体で行われていることなのである。さらにいえば、自治体では対応できないサービスに関しては、新しく作ることも視野に入れ仕組み作りを進めている点が先進的である。学校は子どもの課題発見機能に優れた場所であり、同様にその他の機関にもそれぞれの強みがある。その強みを最大限に活かし、さらに弱みを補い合うことで、総合的に子どもやその家庭を支えて行く仕組みを作ろうとしている点が、全国でも類をみない。

 現在、私が代表を務めるNPO法人ちゅらゆいでは、不登校の子どもを応援する居場所(以下kukulu)を運営している。今年の3月までは那覇市の委託事業として、生活保護世帯の不登校の子どもたちを支援する事業を実施してきたが、4月に委託事業が終了してから現在までは、自主事業として運営継続している。なぜ自主事業化してまで事業が必要かといえば、今の社会において、公教育から外れた子どもたちは、社会から孤立しやすい構造があるためである。

 特に沖縄ではオルタナティブ(代替的)な学びの場も少なく、学校に行けなくなると、他に行き場がない=子どもたちの育つ場の選択肢が少ない、という状況がある。ここに通う13歳から18歳の不登校の子どもは、kukuluがなければ家庭内で孤立するしかなく、自分の進路や将来のことを誰にも相談できなくなる。そしてその子どもたちを放置すると、先に延べた通り、将来ひきこもりやニートに移行する確率が大幅に上がるのである。仮に就職できたとしても、低学歴では不安定な就労に就くことが多いため、いつでも生活困窮状態に陥る可能性を秘めてしまう。

 我々は、ひきこもりやニート、生活困窮の予防の観点からも、kukuluを自主事業で実施しているのだが、受益者負担が見込めない層がメインの利用者であるため、財源は寄付金や助成金など、外部から集めて来る必要があり、次年度以降も運営を継続するためには、安定した新たな財源の確保が課題となっている。しかしこの場に通ってくる子どもたちにとって、孤立せず仲間を作り、自分の未来を決定できる場は絶対に必要である。

 現在の日本は、レールから外れると社会復帰するのが難しい。例えば、大学を卒業してもニート化する若者が年間8万人いるとの統計もあるが、もはや学力保障だけでは若者が社会に参加することは厳しい時代になっているのだ。不登校やひきこもりは若者が抱える現象の一つに過ぎないのであり、行政も含め縦割りで制度を設計するのではなく、教育・福祉・労働が一体となった若者政策を実行しなければ、漂流する若者が今後も増えて行くのではないだろうか。

 「学校へ行く」「働く」という、あたりまえの状態から外れることは、子ども・若者にとっても非常に辛くて苦しいものだ。我々大人は、そのような生きづらさを抱えている子ども・若者の声をしっかり聞き、ニーズを吸い上げ、どのようなサービスや応援体制、制度があれば良いのかを議論し、実践していく必要性がある。