スイス・ジュネーブの国連欧州本部で9月21日に開かれた沖縄問題シンポジウム。沖縄県の翁長雄志知事は約20分間、各国の政府代表や国際NGOのメンバーらに沖縄の歴史や基地問題を解説した。

スイス・ジュネーブの国連欧州本部で開かれた沖縄問題シンポジウム

 国連人権理事会の特別報告者、ビクトリア・タウリ・コープスさんは8月に新基地建設が進む名護市辺野古を訪れた感想を報告。国連NGO「市民外交センター」の上村英明代表(恵泉女学園大学教授)、琉球新報の潮平芳和編集局長、沖縄・生物多様性市民ネットワークの吉川秀樹代表が自己決定権、表現と報道の自由、環境権をテーマに問題点を訴えた。辺野古の現場で取材する沖縄タイムス北部支社の阿部岳報道部長は、地域住民の訴えを伝えた。(福元大輔)

■日米、責任をたらい回し/翁長雄志氏(沖縄県知事)

 国連の人権理事会に初めて参加する。沖縄で起きていることを世界的な意味合いを含め、紹介したい。

 600年前に琉球王国ができ、営々と独立国家として存在したが、1879年、日本国に併合された。

 沖縄は独自の言語を持っていたが、使用を禁止され、良き日本人として頑張るよう勉強した。

 第2次世界大戦では日本で唯一の地上戦があり、20万人が亡くなった。県民は10万人を超えた。住民は日本軍と一緒に逃げ惑い、独自の言語を使うことで「意味が分からない」とスパイ扱いされ、殺されることもあった。

 戦争が終わると米軍が占領。ふるさとから遠く離れた収容所に住まわされる間に米軍が土地を強制接収し、基地を建設した。沖縄県民が「どうぞ」と差し出した基地はない。

 1952年、日本は独立と引き換えに、沖縄を米軍の施政権下とした。高等弁務官がすべてを取り仕切り、自己決定権はない。過酷な人権問題の中、27年間、大変厳しかった。

 普天間飛行場も差し出した基地ではない。そこが住宅街で危ない、老朽化した、そんな理由でおまえたちが新しい土地を提供し、そこに普天間を移すと言われ、理不尽さを感じる。

 現場では県民が新基地を造らせないと抗議している。日本政府は無視するように工事を進める。基地ができれば米軍が使うので米国も当事者だ。

 米国は日本の国内問題と主張し、日本政府は後ろで米国が認めてくれないと言い、たらい回しにされる。自己決定権、人権という意味でも他の都道府県と沖縄は違う扱いだ。

 基地問題の原因はどこにあるのか。県民か、国民全体で考えない日本政府か、当事者ではないと知らんぷりを決め込む米政府か。辺野古新基地がどのように建設され、われわれがどのように止めるのか。日本と米国の民主主義がどうなっているか。沖縄に基地を置く真犯人は誰なのか。沖縄の現状に関心を持ち、世界中で謎を解き、私たちの沖縄が子や孫のために誇りを持って生きていけるように、助言してほしい。

■政府は地元の事前承認必要/ビクトリア・タウリ・コープス氏(国連人権理事会特別報告者)

 8月に沖縄を訪れた。名護市辺野古の新基地建設に反対する人々から話を聞き、海上での抗議行動も見た。私の出身地フィリピン北部には五つの米軍基地があった。ベトナム戦争にも使われ、ベトナムの人たち、先住民を殺したことに関与した。住民は抗議した。

 米軍基地に反対したが、フィリピン政府は1991年、新たに基地使用を合意。賛成票が一つ多いだけだった。沖縄の状況にも同情の念を感じている。

 フィリピン人の安全保障、環境、人権侵害、先住民に対する問題などが議論される中、クラーク基地でひどい事件があった。先住民がイノシシと間違われ、米兵に殺されたのだ。先住民に対する差別でもある。

 沖縄に戻ると、国土面積の0・6%に在日米軍専用施設面積の74%が集中し、多くの米軍関係者が暮らしている。政府は沖縄に犠牲を強いている。

 基地内で起きた環境汚染の情報にアクセスする権利もない。沖縄の人が先住民かどうかは別として、自己決定権がある。国連宣言でも領土と資産に対する権利が認められている。辺野古の新基地建設のように開発するなら、政府は地元の人々の事前承認が必要だ。

 沖縄の人たちは自分で自分のことを先住民と認識すると国連宣言の条項が適用される。自己決定権を含めて、だ。文化的な発展につながる。沖縄の人がいかに苦しんでいるか。知事の声、沖縄の過半数の意見を聞き、よく分かるようになった。沖縄の歴史、この不正義をたださないといけない。国連人権理事会での発表は一つの機会になる。

■基地は環境悪化要因/吉川秀樹氏(沖縄・生物市民ネットワーク代表)

 戦中、戦後に沖縄で土地を強制接収し、建設された米軍基地は環境問題の原因ともなっていく。航空機の騒音、実弾演習による山火事、航空機の墜落など。基地に関する環境問題の情報のアクセスはほとんどなく、提供されてもその信憑(しんぴょう)性を確認できない。

 また辺野古・大浦湾は、沖縄でも生物多様性の最も豊かな場所で、260種以上の絶滅危惧種を含む5300種以上の海洋生物が生息する。地域には、4500人が住み、豊かな環境に依存している。環境に関する要因からも、新基地建設に人々は反対している。

 国内外の専門家にぜひ基地による環境への影響の検証に参加してほしい。普天間基地は米国の基地だけでなく、国連の施設でもある。沖縄の人々から奪った土地に建設され、人口が密集した市の真ん中に位置する。国連は自らの責務について言及するべきである。

■日米政府に重い責任/上村英明氏(恵泉女学園大学教授)

 自己決定権について話したい。沖縄は1429~1879年、中継貿易で栄える独立国として存在。米、仏、オランダと友好条約を締結した。

 日本は琉球が領土内にあるので、国家として併合するのは当たり前という理屈で1872年に琉球藩とした。1879年に日本政府は軍隊を派遣し、首里城を包囲。沖縄県を設置した。

 米政府は不正義を見ながら行動をとらず、日本政府による琉球の植民地支配を知りながら、第2次世界大戦末期の戦場に選定した。サンフランシスコ講和条約第3条で、米国が沖縄を国連の信託統治に置くと言えば、日本政府が同意すると書かれている。信託統治は第2次世界大戦の敗戦国の植民地を統治するシステム。信託統治は将来の独立を約束しないといけない。自己決定権を明確に主張できる先住民族の権利の枠組みで、沖縄に対する日米政府の責任を考えてほしい。

■許されぬ新基地建設/潮平芳和氏(琉球新報編集局長)

 辺野古の新基地建設で、市民らは米軍基地のゲート前に1年以上、連日座り込む。警察官は今のところ、市民を警棒で激しく殴りつけるような弾圧までは行っていない。ただ、15日までの1年2カ月で市民7人が公務執行妨害容疑などで逮捕された。記者が機動隊員に威圧され、排除されるケースもあった。

 海上では海上保安庁の荒々しい警備で抗議船が転覆したり、市民が溺れかかったりする事例が絶えない。琉球新報と沖縄タイムスの両紙は過剰警備を批判的に報じている。抗議や取材の活動を複数の警察関係者が執拗(しつよう)にビデオ撮影する行為は表現、集会、報道の自由を威圧している。

 県民への世論調査で新基地建設には常に7~8割が反対する。日米両政府が沖縄の自己決定権を侵害し、新基地建設を強行することは民主国家では許されない不正義だと強く指摘する。

■人に命の予備はない/阿部岳氏(沖縄タイムス北部報道部長)

 辺野古住民の島袋文子さんの話を紹介し、現場からの報告としたい。86歳の女性が、けがをしながらも新基地建設への抗議行動に参加し続けている。

 それはなぜか。沖縄戦を体験したからだ。日本兵は自分の身を守るために住民を殺したり、危険にさらしたりした。島袋さんは頼る者なく戦場をさまよい、ある夜、死体が浮かぶ池から水を飲んだ。血と泥を飲んで生き延びた。

 今、彼女は「日本がまた沖縄を犠牲にしている」と言う。沖縄の土地と海を奪い、抗議参加者のけがは増え続けている。誰もが死者が出ることを恐れている。

 島袋さんは言った。「私に命の予備はない。その命を懸けて、若い人たちが地獄を見るのを防ごうとしている。国連の場に集まった皆さんも同じように命の予備がないとしたら、分かってもらえると思う。日米両政府を止めてください」(フロアから)


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