安保法制が成立した。しかし、今回の法制には、(1)存立危機事態条項による集団的自衛権行使の違憲性(2)外国軍の武器等防護(自衛隊法95条ノ2)は集団的自衛権の行使であり違憲ではないかとの懸念(3)後方支援活動の拡大による外国の武力行使との一体化、自衛隊員の安全の懸念-など、多くの問題点が指摘されている。これらを是正するためには、可及的速やかな法改正が必須だろう。


 残念ながら、野党は欠陥のある法案を廃案・修正することはできなかった。しかし、200時間を超える審議の中で、政府から重要な言質をとっている。


 まず、(1)存立危機事態条項について、横畠法制局長官は9月14日の審議で、存立危機事態は武力攻撃事態とほぼ重なり、武力攻撃事態等でないにもかかわらず存立危機事態が認定されることは「まずない」と答弁した。したがって、日本への武力攻撃なしに存立危機事態を認定するには、政府の側に重大な立証責任が課されることになる。


 また、(2)外国軍の武器等防護について、中谷防衛大臣は9月4日、あくまでテロリストなどの非国家的主体を相手にした場合の規定だと答弁した。したがって、主権国家同士の国際紛争では、外国軍の武器等防護をしてはならないことになる。


 さらに、(3)後方支援について、条文上は、活動場所を「非戦闘地域」に限定せず「現に戦闘が行われていない地域」に拡大したものの、安倍首相は5月27日に、「今現在戦闘行為が行われていないというだけではなくて、自衛隊が現実に活動を行う期間について戦闘行為が発生しないと見込まれる場所を実施区域に指定することとなります」と答弁した。したがって、非戦闘地域の定義をほぼ踏襲したことになる。


 ところで、元気・改革・次世代の3野党は、法案への賛成と引き換えに、法案の問題点を是正するため、自公と合意して、付帯決議を取り付けた。その内容は、閣議決定の形で担保され、5党は、法律成立後も協議会を設置して、法改正措置を含め検討する。


 具体的には、武力攻撃事態等に該当しない存立危機事態での防衛出動は、「例外なく」国会の事前承認が必要となる(2項)。自衛隊の海外活動については、丁寧な情報開示の下、一定期間ごとに国会の承認が要求され(4項)、国会が活動終了議決をしたときには、「法律に規定がある場合と同様」、「速やかにその終了措置」をとる(5項)。所管の国会内委員会は、常時監視をして、事後的検証もする(9項)。後方支援中の「弾薬の提供」は、「緊急の必要性」がある場合に、「部隊の要員等の生命・身体を保護する」ものに限り、核兵器や大量破壊兵器の輸送も行わない(7、8項)。


 もちろん、こうした答弁、付帯決議・5党合意の閣議決定だけでは、政府の不当な武力行使を抑制する力は弱い。しかし、数の力で劣る野党が、それぞれに最大限の努力をして獲得した貴重な成果だ。今後は、その成果をどこまで生かせるかが勝負だ。


 法律は適用されなければただの言葉に過ぎない。問題点をしっかり理解し、政府が自らの答弁を守るよう監視し続けることが重要だ。(首都大学東京准教授、憲法学者)(記事と写真の転載、複写を固く禁じます)

※「木村草太の憲法の新手(しんて)」は、本紙第1・3日曜日に掲載。