沖縄の平均寿命順位が下がった理由として、早世率の高さが挙げられています。肥満が関与しているようです。肥満が増えた理由は、運動不足、脂肪摂取の過多、それに加えて白米が普及したことも考えられます。先日の糖尿病学会で、20年前から沖縄県民の総カロリーは減少しているものの、炭水化物の摂取率が徐々に増えて来ているとの興味深い報告がありました。


 戦前の沖縄の主食は芋でした。本島北部では米を食べていた所もあったようですが、それでも玄米もしくは五~七分くらいに粗く精米したようです。味が悪かったこととかさ上げの意味から、麦や豆を混ぜたと聞きました。戦後は外来米、日本復帰後は国産米が主流となり、精米技術の向上に伴い30年ほど前から白くておいしいお米が食卓に上るようになりました。主食はここ50年で確実に白米になりました。豊かさの象徴だったのですが、白米を食べ続けると糖尿病になりやすいという研究もあります。


 このようななか、ちまたでは炭水化物(主食)を極端に制限する、いわゆる低糖質ダイエットが流行しています。しかし、この方法でダイエットをすると、相対的にタンパク質と脂肪の割合が増え、バランスが悪くなります。長い目でみたらどうなるかもまだはっきりと分かっていません。このようなバランスの悪い食事をする前に一度、玄米や雑穀など、血糖を緩やかに上げる糖質を主食にしてみることをお勧めします。琉球大学医学部の研究によると、玄米のぬかに含まれている物質(γ-オリザノール)が食欲を抑え、血糖を下げる効果があるそうです。味の嗜好(しこう)が変わり、肥満や高血糖を良くする可能性があります。


 今から200年ほど前の王府の医師が書いた食材の本には、うるち米のほか、もち米、大・小麦、アワ、高粱(もちあわ)、黍(モチマージン)、稷(マージン)など多種の「穀物」についての記載があります。琉球には今や失われた豊かな雑穀文化があったのでしょうか。


 もしかしたらわれわれは今、主食の見直しという歴史的転換点に立っているのかもしれません。主食を見直すことは、おかずをも見直させ、食べ物から育まれる命の大切さや、家族や自分を大切に思ってくれる人、そして自分の周りの人々の元となっている「食べ物」へのまなざしを変えることにもつながることと思います。(2015年8月14日付沖縄タイムスくらし面「命ぐすい耳ぐすい」から転載)