安保法制に関する国会審議が続いているが、法案の骨格を確認しておこう。ポイントは四つある。

 第一に、自衛隊は、紛争に巻き込まれた在外邦人の「輸送」業務に限定されていたが、より危険な「警護・救出」業務までもが可能になる。

 第二に、国連PKOに参加中の自衛隊の武器使用は、自衛隊が攻撃を受けた場合に、その防御に必要な範囲に限定されていたが、現地住民や他のPKO部隊の保護・警護の場合にも拡大される。

 第三に、外国軍の後方支援は、日本の周辺地域において、放置すれば日本に直接の武力攻撃が生じる事態(周辺事態)が生じた場合に限定され、それ以外の場合は、イラク特措法などの特別法を作る必要があった。

 しかし、周辺事態における地理的限定が消滅し、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態(重要影響事態)が生じれば、後方支援が可能になる。さらに、その他の場合も、一定の条件の下、国会の承認を得て後方支援が可能になる。

 第四に、自衛隊が防衛出動・武力行使できるのは、武力攻撃事態にのみ限定されていたが、いわゆる存立危機事態にもできるようになる。これは、集団的自衛権の行使を限定容認するものといわれる。


■国民の理解妨げ

 一連の法案は、他にも実務的で細かな内容が含まれており、自衛隊の現場のニーズをくんだという意味で、評価できる面もあろう。しかし、憲法学の観点から見たとき、幾つか重大な問題点を指摘せざるを得ない。

 第一に、多様・多量な法案を一括審議することは、国会審議の混乱を招き、国民の法案内容への理解も妨げること。内閣は、国会に議題を提案する権限を持つが(憲法72条)、だからといって、自分たちの都合を国会に押し付けるのは不当だ。十分な国会審議を実現すべく、テーマごとに区分した上で、法案を提案すべきだっただろう。


■具体策示されず

 第二に、自衛隊員の安全確保への懸念が強いこと。今回の法案では、在外邦人救出や、他国PKO部隊の駆け付け警護など、自衛隊が武装勢力やテロリストと直接に衝突する業務が加えられた。後方支援についても、「非戦闘地域」でのみ行うとの限定が緩和され、現に戦闘中でなければ行うとしている。極端に言えば、翌日は戦闘になるかもしれない不安定な場所であっても、活動の間だけ戦闘がやんでいれば良いということになりかねない。これまで以上に自衛隊員が危険な状況に置かれるにもかかわらず、安全確保のための具体策はほとんど示されていない。基本的には現場任せとなろう。

 では、自衛隊員に、もしものことがあったら、あるいは、もし不適切な派遣命令が出されてしまったら、誰がどう責任を取るつもりなのか。

 イラク戦争では、後方支援として違憲な兵員輸送がなされたと名古屋高裁は指摘した。また、攻撃の根拠たる大量破壊兵器も見つかっていない。しかし、その検証・責任追及は極めて不十分だ。

 責任ある自衛隊派遣・武力行使には、事後的な検証・責任追及のための厳格な手続きが不可欠だ。これを欠いたまま、自衛隊の活動を拡大することは、今回の法案の最大の問題点だろう。(首都大学東京准教授、憲法学者)(記事と写真の転載、複写を固く禁じます)
※「木村草太の憲法の新手(しんて)」は、本紙第1・3日曜日に掲載。