本格始動を前に、大学生と中学生の休みが重なる2014年8月に実施したひとり親学習応援プロジェクトの「試運転」。中学生には一緒に過ごした思い出と、参加してくれたことへの感謝をつづった手紙を送ることにしました。保護者の方とは、中学生の様子を交換日記でやりとりしてきたこともあり、そのお礼と意見交換会のお知らせを手紙に添えました。

大学生への要望がつづられた保護者向けのアンケートの一部

中学生に宛てた手紙。プロジェクトでの思い出や、成長したことなどをつづった

大学生、保護者、中学生での意見交換会

大学生への要望がつづられた保護者向けのアンケートの一部 中学生に宛てた手紙。プロジェクトでの思い出や、成長したことなどをつづった 大学生、保護者、中学生での意見交換会

忙なひとり親の生活
宜野湾市がひとり親家庭の保護者を対象にしたアンケート調査で、保護者の不安や悩みは、母子・父子家庭ともに「生活費」「仕事」「子供の教育」の順となり、生活費や仕事に追われ、子どもへの教育がどうしても後回しになってしまっている現状が浮かび上がってきました(12年3月末時点)。毎日、忙しい保護者が、十分に子どもに目をかけることは難しく、お金のかかる塾に通わせることも厳しい状況であることが分かります。
だからこそ、大学生がひとり親家庭の中学生を支援する内容や中学生がどうやって大学まで通うのかなど、配慮すべきことなどを話し合ってきました。市役所、母子会、社協とも意見交換会を開き、市役所の職員とは議論を重ね、運営の基盤を作っていきました。最終的に、参加するためには、市役所で手続きをし、保護者と連携していくことで落ち着きました。
そして、手続きをしてくれた保護者の方からたくさんの期待の言葉をいただきました。
「勉強を見てあげられないので、すごく助かる」
「大学生の勉強の話や進路の話を子どもに聞かせてほしい」
忙しい保護者に向けて、プロジェクトの「試運転」が保護者と子どもの話題になってもらえたらと思い、交換日記もすることにしました。
「勉強を見てくれてありがとう」
「この子が楽しそうに大学での話をする」
「飼い始めた猫を嫌っていないか、さりげなく聞いてほしい」
「ノートのまとめ方を教えてほしい」
家庭での様子、大学生への要望などがつづられ、子どもへ強い関心が伝わってきました

学生にとって大学は未知の世界
そんな中学生を預かるのですから、大学生は責任重大です。しかも中学生にとって、大学は未知の場所。全く知らない大学生と勉強をするなんて、不安でいっぱいです。そんな中、中学生がやる気いっぱいに来てくれることはすごく嬉しいことでした。初対面では緊張してあまり話せなかった中学生が、「昨日は海に行ってきたよ!」などと大学生と徐々に打ち解けてゲームや趣味の話し合いができるようになり、お互いの心の距離は縮まっていきました。
大きな事故もなく、最後まで中学生の参加人数は予想を上回り、学んで帰っていく姿に、参加してくれたことへのお礼を手紙にしたためました。

「こんにちは。初めての大学で、大学生と話したり、勉強したり、遊んだりして、初めての経験が多かったと思うけど、隆君にとってプラスになっていると嬉しいです。」

慣れない大学に来てくれている彼らにとって、たくさん話のできるお姉さんのような存在でありたいと思いながらプロジェクトに取り組んできました。できるだけ堅苦しい言葉は使わずに、勉強はもちろん、服装などにも気にかけていることなども盛り込みました。
「難しい問題にもひるまず挑戦したね。積極性とチャレンジ精神は素晴らしい長所だと思いました」
「服装、すごくオシャレだよね」
「スポーツも、ゲームも楽しかったね! 夏休みが終わっても学習応援プロジェクトを計画しています! また、一緒にやりたいな」
夏休み期間中の「試運転」が終わると、2学期からはプロジェクトが本格的に始まります。参加してくれた中学生に、引き続き参加してほしいとの思いも込めました。

護者と意見交換
子ども達の成長を伝えようと開いた保護者との意見交換会では、保護者からこんな質問がありました。
「大学生になって勉強や将来の仕事についてどのような考えがあるのか聞かせてほしい」。
 宜野湾市のひとり親家庭への調査で、「子どもをどこまで進学させたいか」という質問に、「大学またはそれ以上」が25.8%、「専門学校」が13.5%を占めました。
一方で、ひとり親の最終学歴は「高校」が48.4%、「中学校」17.7%、「専門学校」15.5%。保護者も子どもが大学で何を学べるのか、どんな未来が描けるのかなど、多くの情報を得たいという気持ちが手に取るように伝わってきました。
私は、福祉を専門的に学ぶために大学に通っていますし、その知識を生かしてボランティアに参加しています。大学生になれたからこそ、出会えた人もいるし、視野も広がりました。プロジェクトのメンバーが大学で学ぶ意義もそれぞれ違います。社会福祉士をはじめ、公務員、教員など、目指しているものも違います。プロジェクトを通して、継続的にひとり親世帯の保護者や中学生の悩みに応える必要性を感じました。
もう一つ、保護者からの意見で気になったのが
「進路の話をあまりしてくれない」という内容でした。
実は、「試運転」中、中学生たちから「お金で親に心配をかけたくない」「進路の話をするとお金がかかることが親に分かってしまう」との声が聞こえてきました。進路を考えていないのではなくて、進路の話をしにくかったようでした。宜野湾市では、児童扶養手当を受給しているひとり親世帯の約7割が年収100万円未満。経済状況は非常に厳しいものがあります。
私たちは、プロジェクトのメンバーにもひとり親家庭の学生もいることや、奨学金や大学の給付型奨学金を利用していたり、アルバイトをして学費や生活費を賄っていたりしていることを伝えてきました。親を思い、進路を考えあぐねている中学生に、金銭面での不安を取り除き、将来の選択肢を広げる必要があるという課題も見えてきました。

私たち大学生からも保護者に対して、
「宿題を出すように約束する」
「進路の話も、大学生からも聞いてみる」
と、解決につながる社会資源はないか、大学生でもできることはないかと共に考え、取り組むことを挙げていきました。今後も保護者との協力と理解がより一層必要であると感じました。
2学期が始まると、夏休みのようにたっぷり時間があるわけでもありません。保護者の熱意を受け、このプロジェクトをさらに良いものにしていこうと気が引き締まりました。次回は学習支援の本始動についてお伝えします。