沖縄県の観光業は好調に推移しており、昨年度の観光客数は700万人を超えて過去最多、今年度はそれを上回る750万人以上と見込まれている。その主たる要因の1つは、円安の影響だ。日本人は割高になった海外旅行よりも国内旅行を選び、諸外国の人々には割安な日本への旅行が人気なのである。

沖縄観光客が年間716万人に達したことを伝える2015年4月22日付の沖縄タイムス

ホテル建設が予定されている國映館の跡地(右)と隣接する駐車場=那覇市松尾の国際通り(2014年6月撮影)

沖縄でのホテル建設計画についてインタビューに答えた嘉新琉球開発の馬社長(4月20日付沖縄タイムス紙面から)

沖縄観光客が年間716万人に達したことを伝える2015年4月22日付の沖縄タイムス ホテル建設が予定されている國映館の跡地(右)と隣接する駐車場=那覇市松尾の国際通り(2014年6月撮影) 沖縄でのホテル建設計画についてインタビューに答えた嘉新琉球開発の馬社長(4月20日付沖縄タイムス紙面から)

 そうした中、台湾のセメントメーカー嘉新水泥(嘉新セメント)が、国際通り沿いに高級ホテルやレストランなどからなる複合施設を建設するとの発表があった。那覇市内には、国際通り付近だけでも複数の大型ホテルが計画中あるいは建設中であり、近いところではハイアットリージェンシー沖縄那覇が今年7月に開業を予定している。

 今後、県内で開業するホテルの客室数を合計すると膨大な数になるが、果たしてそれらの大型投資は成功するのか? また4月25日に開業するイオン沖縄ライカムをはじめとした大型商業施設や、USJが構想するテーマパークなどの開発は、沖縄の観光にどのような影響をおよぼすのか? 大きく環境が変化する中で、県内の各地域および観光業や周辺産業を営む地元企業は、どんな対策を取るべきか?

 これらの観点で分析を加え、シリーズで解説してゆきたい。

 今回は手始めとして、海外からの観光客について考える。外国人観光客の増加率は国内客を大きく上回っており、今年度以降もさらなる増加が期待されている。中でも中華系の観光客の数が伸びており、各地で目立つ存在になっている。

 よく中華系とひとくくりで表現されるが、中国本土の人々と台湾人では旅行のスタイルも志向も大きく異なる。このため、両者を分けて扱うことが重要と考えられる。

 中国本土からの観光客は増加しているが、ビザ発給条件の緩和により、以前に比べ所得の低い層も増えている。彼らは日本で自動車の運転ができないため、団体でのバス旅行が主となっている。このため中国人の観光スタイルは、昔の国内旅行客に似ている。

 県内の観光関係者からは、「中国の観光客は沖縄的なモノを求めておらず、日本へ旅行に来ているという意識が強い」との話をよく耳にする。彼らは、爆買いと言われているように家電製品などを大手流通チェーンで大量に購入しており、旅行内容はショッピングツアーの色合いが濃い。また、多くが本場日本のラーメンを楽しみにしているが、訪れている店は往々にして県外資本のチェーンである。

 よって中国本土からの観光客が県内経済にもたらす効果は、その規模の割には少々限定的と見るのが妥当だろう。また中国人旅行客の数は、中国政府の方針や日本など諸外国との関係次第で大きく増減すること。中国政府が、海外での爆買いを控えるように呼びかけていること。さらに中国におけるバブル崩壊が囁かれていることから、今後の動向は不透明であり、中国人観光客に的を絞ったビジネスは比較的大きなリスクをはらんでいる。

 一方、台湾からの観光客も大幅に増加している。沖縄県や沖縄観光コンベンションビューローの観光客誘致活動も効果をあげているとは思われるが、沖縄への旅行代金が安く、台湾での国内旅行よりもお得感がある。というのが、大きな要因であろう。

 台湾からの観光客は個人客が中心で、台湾で出版されている旅行ガイドやネットの情報を頼りに、アクティブに動き回る。最近は、若者数名のグループで行動している姿がよく見られ、レンタカーを駆使して観光客向けではなかったマニアックな所へも訪れている。

 台湾人観光客は家電製品の爆買いはしないが、日本製の医薬品やコスメ製品を買い求め、ラーメンを食べることを楽しみにして、沖縄的なモノをさほど求めないという点は中国本土からの観光客と共通する。

 このように台湾人の沖縄観光では、県内への経済効果が少々薄くなるリトル日本的な消費が目立つ。しかし彼らの多くは個人旅行であり、その行動や志向性には日本人旅行者に近い面もある。一方、台湾ではネットやSNSの普及率が高く、フェイスブックの利用率は世界一とも言われている。行く先々で情報を探し、情報を発信しながら気ままに動く点は、日本人の若者層にも似ている。

 以上のように観光客の受け皿となる大型ホテルの開発が進み、今回見てきたような中国人や台湾人を含む外国人観光客がさらに増えると期待される。ただしそうした開発を行う企業も、中華系の観光客がお金を使う商業施設なども、多くは県外あるいは海外の企業である。そのままでは観光客が増えて賑わう割に、県内に残るお金は少なめになるだろう。

 しかし、国内観光客を含めてそれだけの集客があるのなら、やり方しだいでは地元資本の企業や店舗、そしてメーカーにもビジネスチャンスがあるはずだ。次回はそうしたメリットを享受するための、具体的な指針を考えてゆこう。