2013年5月、東京都小平市で住民投票が実施された。半世紀前に東京都で作られた道路計画の見直しを求めるため、住民たちが署名を集め、投票までこぎつけた。翻って、沖縄の辺野古移設問題。民意が明確な「ノー」を突きつけ続けているにもかかわらず、政府は工事を強行している。切迫した状況の中、住民は行政とどう向き合い、社会をどう生きていけばいいのか。小平市の住民運動に携わり、「民主主義」を追求する哲学者・國分功一郎氏(高崎経済大学准教授)のインタビューを2回にわたってお届けする。(聞き手・デジタル部與那覇里子、中部報道部下地由実子)

住民投票について語る國分功一郎氏=3月、ジュンク堂書店那覇店(岩沢蘭撮影)

 ―小平の住民運動で大切にした視点を教えてください
 「『住民』という言葉が非常に大切だと思っていた。市民になるには国籍などの条件が必要ですが、住民となると、ホームレスも含めてその地域に住んでいるみんなが住民なんです。地域というのは、そこに住んでいる住民のものだろうし、その地域をうまく生かすことができるのも、住民なんです」。
 「小平市の場合、東京都が、渋滞解消のための道路計画を推し進めていました。しかし、それは半世紀前の計画。住民はすでに、渋滞が解消していることを知っていました。だから、住民の考えや意見を都は十分に話しを聞くべきですよね」
 ―辺野古の問題も政府が住民の意見を十分に聞いているとは思えません
 「住民と中央の意見がずれていることではなく、中央が住民の話を聞こうとしていないわけですよね。しかも、沖縄は長い歴史にわたって、その状況が続いています」
 「政治学者の白井聡君は著書「永続敗戦論」の中でこう述べています。戦後、ベトナム、朝鮮半島などの東アジアは、戦争、国の分断、戒厳令が敷かれるなど、冷戦の最前線に置かれていた。でも、日本だけが民主主義ごっこをさせてもらえていたわけです。それが結局、冷戦下のいろんな矛盾点を沖縄に押しつけていたからできたと。僕は、それはすごく説得力があると思います」
 「憲法で保障されている表現の自由は、意見を出し合って、話し合って、物事をよりよくしていくためのものなのに、今の中央にはそういう視点がないですよね」
 ―一方で、行政の決定に、住民の意見が反映される保障はありません。住民が参加できるよりよい制度に変えていくには、どうしたらいいでしょうか
 「町づくりに関しては、住民主体でやっていこうという雰囲気ができはじめています。他方で、行政側に入れてもいいという分野を行政側があらかじめ選んでいるようにも思います」
 「イメージとしては、最近、子どもが遊ぶ砂場に柵があるように、柵の中なら自由に砂遊びをしていいよという感じです。小平市もそういう意味での住民参加はやっていると評判らしいんですよ。政治学者も評価していました。でも、僕にしたら『何も分かってない、机上の空論だろ』という感じです」
 「住民は、行政が入ってきてほしくないという分野にこそ、入っていきたいと思っています。一番気になるところだからです。まずは制度ができなければなりません」
 ―現在、国と沖縄県と住民が訴訟で対立するケースが出てきています。辺野古新基地建設をめぐる埋め立て承認取り消し訴訟、米軍北部訓練場内を通る県道70号の共同使用協定書などの開示決定取り消し訴訟。交渉する選択肢もあると思いますが、すぐ訴えるという国の姿勢をどう思いますか。
「単に、話を聞く気がないんでしょうね。こんなにも裁判が続いているのは異常じゃないですか。強力な権力を持っているのに、司法が味方をしたぞ、というためでしょ。しかも実際は、司法と行政は切れてないですよね。行政を訴えた裁判は勝てないですよ」
「例えば、行政に不利な判決を出したら、どこかの地裁に飛ばされるなんてよくあるじゃないですか。裁判官もびびっちゃいます。実は、三権分立はまったくウソで、司法も非常に空気を読んで動きます。国はそれを分かって使っていますよね。行政の権限が強大になって、横暴になっているということではないでしょうか。行政の支配権限をどんどん強めていっている感じがしますね」