「鳴き声以外は全て食べる」と言われるほど、沖縄では豚肉料理が普段からよく食べられています。豚の飼育頭数は23万4千頭で全国13位、飼育戸数は276戸で全国5位。
 さて、牛はどうでしょう。沖縄の肉用牛の飼育頭数は7万1400頭で全国9位、全国シェアは2・8%あります。飼育戸数も2760戸で全国7位。意外にも全国的に、沖縄の牛も健闘しています。黒毛和種の子牛に限れば、石垣牛、もとぶ牛など、全国でも人気の高い牛たちがずらり。黒毛和種の子牛の取引頭数は沖縄県は全国4位です。
 しかし牛の爪の手入れをできる削蹄師(さくていし)は県内に100人ほど。しかも実際に削蹄師として活動している人は13人ほどに過ぎません。前回のコラム「牛の“ネイリスト”(1)」でも書きましたが、牛の爪切りを怠ると、歩きにくくなって体調を崩したり、そこから病気になったりすることもあり、牛主にとっても、牛にとっても非常に大切な役割を果たしているのに、なかなか技術の高い削蹄師が育ちません。職業として成り立つレベルになるまでには、500頭以上の削蹄経験が必要です。慣れないうちは1頭に約1時間かかるほど体力的に厳しいこともあり、農協などは畜産農家に削蹄をしてから牛を出荷するように指導をしていますが、これまで沖縄では削蹄が重視されなかったことや、全国と比べても農家からの依頼が少ないこと、そもそも削蹄師が少ないために削蹄師自体のレベルが上がらないことも背景にあります。
 2014年9月、そんな沖縄で初めて全国大会への予選を兼ねた「九州・沖縄地区削蹄競技大会」が開かれました。高校野球で例えるなら、甲子園のような伝統ある大会です。上位8人+沖縄枠1人が代表として全国大会に出場しました。大会では、競技中のおしゃべりはダメ。不正を防ぐため、大会前の審査員との交流も禁じているほど厳格です。
 今回の大会は、沖縄県内の削蹄師の第一人者である私の父が、全国の優秀な指導級削蹄師とつながりを持ち、積極的に勉強会に参加してきたことで、ようやく沖縄での開催にこぎ着けることができました。地元の削蹄師の技術を上げようと、父は削蹄師になってから、ずっとずっと沖縄での開催を祈願してきました。地元開催が決まった1年半も前から、準備を重ねてきました。
 唯一心配だったのは台風! でも私、晴れ女なんです♪ 「私が居れば晴れるに決まってるさ~」と関係者を落ち着かせ、準備万端。当日は、日ざしがまぶしいほどの好天となりました。

【沖縄に初めて渡った競技大会の横断幕♪】

【テレビの取材を受ける沖縄県代表の我那覇秀樹さん】

【競技選手1人(右)が補助し、もう1人が削蹄しています】

【広島県で活動する獣医による、削蹄やあらゆる蹄病についての講義もありました】

【昨年の優勝者、鹿児島県牛削蹄師会の深見哲久氏による模範演技】

【全国大会に出場する削蹄師の精鋭たち】

【沖縄に初めて渡った競技大会の横断幕♪】 【テレビの取材を受ける沖縄県代表の我那覇秀樹さん】 【競技選手1人(右)が補助し、もう1人が削蹄しています】 【広島県で活動する獣医による、削蹄やあらゆる蹄病についての講義もありました】 【昨年の優勝者、鹿児島県牛削蹄師会の深見哲久氏による模範演技】 【全国大会に出場する削蹄師の精鋭たち】

 大会が始まろうとしています。個々の削蹄師がお互いの仕事ぶりを披露し、技術を磨く場だけあって、ギャラリーには、人、人、人! 審判員や審判補助の先生方は全国各地から沖縄に集まり、出場選手の応援団も、九州各地から集結。県内からも市町村長をはじめ、酪農関係者や和牛農家たちが、どんな技術が見られるのか、誰が選ばれるのかと、たくさんの期待を胸に足を運んできていました。私もこれまでいろいろな大会に見学に行っていますが、こんなに人が集まっている大会は初めてでした。
 特に、注目が集まっていたのは、沖縄代表の我那覇秀樹さん(=今帰仁村=)と仲間堅人さん(=糸満市=)。沖縄の削蹄師界の未来を担う2人は、地元のテレビや新聞などのメディアなどから取材攻め。沖縄で初開催となることへの意気込みなどを聞かれ、2人とも「先輩方の教えを守り、日頃の成果を発揮できるように頑張ります」。慣れないインタビューに、緊張で落ち着かない様子でした。
 沖縄で初めての大会に出場するということは、非常に大きなプレッシャーです。現在、沖縄県内で削蹄の技術を指導できるのは父だけですが、父もまだまだ勉強中。県外の削蹄師さんとも交流をしていく中で、切磋琢磨しながら技術をアップさせてきました。

 競技会では、2つの技術を競います。試験の一つ、「削蹄判断」では、歩く牛を見て、その牛に最も適した削蹄の方法をマークシートで解答してきます。牛は、ひづめが2つに分かれている偶蹄類なので、外側と内側のひづめのバランスを見極める必要があるからです。ちなみに馬のひづめは1つです。そして、試験のもう一つは実際にひづめを切る実技。2つのトータルの点数で競い合います。
 実技試験は、くじ引きで決められたペアが、1頭の牛の左右片側の足をそれぞれが削蹄します。
 ここでのポイントは、牛の体勢です。牛が不快に思う姿勢で足をあげて削蹄を始めると、暴れてしまい、削蹄どころではありません。人間も中途半端な姿勢を維持するってきついですよね。いかに牛にストレスを掛けないかも技術力になるわけです。