聴覚障がい者にとって、「コミュニケーション」が課題であることは、いつの世も変わりません。情報や考えを伝える難しさが、働く上でも人間関係を築く上でも、教育を受ける上でも、障壁になっています。さらに聴覚障がいは、外見からも障がいがあるとは分かりにくく、「コミュニケーション障がい」「情報障がい」と呼ばれることもあります。
 しかし最近、ITの進化によって、私たち聴覚障がい者のコミュニケーションレベルは健常者と変わらないレベルにまで近づいてきています。

肌身離さず持っているスマホを操作中

アイセックジャパンのリレー電話サービス。エステの予約を入れた時のラインでのやりとり

5千人の友達とつながっているフェイスブックのトップページ

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■聴覚障がい者のコミュニケーション手段


 これまでのコラムでも書いてきましたが、聴覚障がい者の聞こえ方は一人ひとり、大きく違います。
「音が小さくなって、聞き取りづらくなる」
「音は聞き取れるが、音質がゆがんで内容が聞き分けにくい」
「補聴器をつけても音や音声がほとんど聞き取れない」
など、難聴の程度はさまざま。
 さらに、聴覚障がい者のコミュニケーション方法は、聴覚障がいの種類や程度のみならず、障がいが生じた時期や、教育歴などによって、一人ひとり異なります。
 コミュニケーションを助けてくれるものは主に5つ。(1)「口話」(2)「手話」(3)「筆談」(4)「補聴器」(5)相手の唇の動きを見て内容を読み取る「読唇術」。多くの聴覚障がい者は、話す相手や場面によって複数の手段を組み合わせたり使い分けたりしています。どれか一つがあれば十分ということはありません。
 しかし、今では、インターネットの普及のおかげで私たち聴覚障がい者も必要な情報を手軽に得られるようになってきました。今、コミュニケーションの障がいを解決してくれている私のIT活用術を紹介します。

■災害が起きた時


「ホームに人が転落しました」
「人身事故のため、電車が遅れています」
 こういった、駅構内でのアナウンスを私は聞くことはできません。聴覚障がい者は、災害や事件、事故があった時、アナウンスが聞こえないために逃げ遅れてしまうリスクを負っています。これまでは、視覚で周りの人の動きを見て、おかしいな、どうしたのかな、と感じたら、手話や筆談で状況を聞いて、理解していました。でも、災害があっても、周りに人が居ないこともあります。
 そんな時、強い味方になるのが、Yahoo!の「リアルタイム」(http://search.yahoo.co.jp/realtime)です。キーワードで検索すれば、全国の人たちのTwitter(ツイッター)のつぶやきやFacebook(フェイスブック)の最新情報がまとめられています。今、どこで、何が起きているのかが即座に分かり、「○○で事故が起きています」「○から×は通行止め」などの情報がリアルタイムで入ってくるようになりました。これでリスクは少しは軽減されます。

■予約をしたい時


 さて、歯医者や美容室、レストランを予約したい時、電話でしか受け付けてもらえない場合はどうしているかというと、文字通訳サービスなどを提供する「アイセックジャパン」(沖縄県うるま市)のリレー電話サービスを使っています。
 LINE(ライン)でつながっているアイセックジャパンのオペレーターに、予約をしたいお店情報、予約時間、伝えてほしい内容を送ると、オペレーターが私に代わって電話をかけてくれます。このサービスがなかった時は、仕事の面接や病院の予約も自由にできなかったし、携帯に着信履歴があっても折り返すこともできませんでした。自分の意志で自分で電話をしたい時、誰かに頼みにくい時、気軽にできるようになりました。

■友達とつながりたい時


 聴覚障がい者が人と人との交流をしている時に壁を感じる状況に、複数人と一度に会話ができないことが挙げられます。たくさんの人と話したい! 遠くにいる友達とも会話したい! 情報交換したい! と思っても、一対一でしか話すことができないので、健常者と比べると、人と人とのつながりが少なく、交流の場で受け取れる情報も限られていました。
 例えば、聴覚障がい者はきれいに発音することが難しいので、もっときれいな発音で話したいといった悩みを解決できるような、聴覚障がい者に役立つ情報がほしかったとします。でも、会話は一対一でしかできないので、解決のための情報や選択肢をすぐに手に入れられるわけではありませんでした。
 それが、フェイスブック、ツイッターといったSNSの登場で、たくさんの友達とつながる事ができるようになったし、情報も一気に手に入るようになりました。
 私の場合、友達作りや情報収集において、フェイスブックが大活躍! しかも、ミスユニバース沖縄大会に出場してから、私のページは大盛況です。友達申請が一気に増えて、今はフェイスブックで友達を登録できる最大人数、5千人ものつながりのある人たちがいます。全国の人が私の活動を知ってくれたり、逆に、私にたくさんの情報や応援をくれたりします。
 そして、私の周囲で人気のSNSはLINEの無料テレビ電話機能。声を出さなくてもろうあ者同士、リアルタイムで手話で気軽に会話ができるようになりました。これまで、電話をすることができなかった分、スマホを持っていれば、気軽に会話ができます。とても重宝しています! 

 スマートフォンが発売になった数年前、私も周りの聴覚障がい者の友達も、真っ先にスマホを買いに行きました。それは、直感的に私たちのコミュニケーションに役立つツールになると思ったからです。実際、画期的でした。
聴覚障がい者は手が器用な人も多く、目で情報を読み取る訓練を小さいころから重ねてきているので、インターネットはろうあ者にとても向いています。
 しかし、ネットやスマホ、SNSが登場するまで、聴覚障がい者には乗り越えなければならないことがたくさんありました。実際、スマホやSNSが出てきても、解決できない課題もあります。次回は、そういった課題についてもお伝えします。