今でこそ、スタイリストとして仕事をさせて頂いていますが、上京して2年間はアシスタントとしてがむしゃらに働いていました。しかし、過酷な仕事のためか、たくさんのアシスタントが辞めていくのを見てきました。それだけ厳しい世界なのですが、じゃあ実際の仕事の中身はどうなっているのか。なかなか定着しないワケをお伝えします。

【スタイリスト時代。師匠の大田由香梨さんと一緒にファッションショーを見るところ】

【撮影の合間にリースに回るブランドにアポイント取りをしている私のアシスタントの森島友香ちゃん。いつでも電話を取る態勢です。】

【これから撮影に向かうバスの中。アシスタントは徹夜で準備しているので、移動中は貴重な睡眠時間になります(笑)】

【同じ事務所のスタイリスト・デザイナーとDiorのパーティーで】

【森島友香ちゃん(右)はもうすぐ私のアシスタント歴2年になります。頑張ってます! 好きなものも似てきてます!(笑)】

【スタイリスト時代。師匠の大田由香梨さんと一緒にファッションショーを見るところ】 【撮影の合間にリースに回るブランドにアポイント取りをしている私のアシスタントの森島友香ちゃん。いつでも電話を取る態勢です。】 【これから撮影に向かうバスの中。アシスタントは徹夜で準備しているので、移動中は貴重な睡眠時間になります(笑)】 【同じ事務所のスタイリスト・デザイナーとDiorのパーティーで】 【森島友香ちゃん(右)はもうすぐ私のアシスタント歴2年になります。頑張ってます! 好きなものも似てきてます!(笑)】

■3日徹夜も!? 過酷なアシスタントの仕事


 ファッション雑誌には、ページごとに企画テーマがあります。クール企画、ガーリー企画、デート企画などなど。そのテーマに沿って、スタイリストが洋服のコーディネートを組んでいきます。アシスタントはそのサポート役です。
 女性向けファッション雑誌「ViVi」の場合。スタイリストとライター、編集者が話し合いながらコーディネートを組んでいきます。アシスタントは、会話の中で「ヒョウ柄のパンツが足りない」と聞こえたら、すぐさまパンツを探しに行ったり、スタイリストのコーディネートの組み方を見て、感じ、感覚を覚えていく、集中すべき大切な時間です。そして終わるのは大体、夜の11時ごろ。アシスタントの勝負はここから始まります。組み終わったばかりのコーディネートの撮影が、翌日の早朝にあるので、準備をする必要があるからです。

 まずは、洋服に付いているタグを丁寧に取り外して、一枚一枚、きれいにアイロンがけ。そして、タグに書かれている全てのブランド名、値段をひたすら書き出していきます。これは、雑誌にブランド名と値段を掲載するためです。雑誌の隅の方に書かれている、あれです。アシスタントのメモを基に、ライターがタイピングするので、丁寧に、間違いのないようにメモします。
 紹介する洋服や小物は、例えば10ページにわたる企画であれば、スタイリストとアシスタントが手分けをして100近くのブランドをはしごしてかき集めています。商品は数え切れないほどある上に、借りている商品なので、撮影が終われば元の綺麗な状態で返しにいく作業も待っています。特に靴は、底貼りといって、汚れないように靴底に透明テープを丁寧に貼っていきます。

 これらの作業をやっていると、いつの間にか、撮影の集合時間の朝6時(一般の方の迷惑にならないように、撮影は早朝に集中しています)。モデル、カメラマンなど、たくさんのスタッフが関わっているので、作業が終わらなかったということはあってはなりません。だからこそ、アシスタントも必死です。
 撮影が始まると、コーディネートが間違えていないか、洋服にしわがよっていないか、常にチェック。のどが渇いている人がいないか、モデルが寒くないか、など、気配りも忘れてはなりません。現場で一番、走り回ります。

 撮影が終われば、返却作業。外したタグを付け直し、コーディネートを組んだ時にバラバラになったブランドを集め直し、靴の底のテープを剥がします。それが終わると、いつの間にかまた朝になり、貸してもらった100近くのブランドを回ってお返しします。

 この段階で、やっとお風呂に入ることができます。仮眠も2時間ほどとれる余裕が出てきます。ちなみにこんなことが月に3回ほど起こります。3日徹夜ということもザラ。しかし、仕事は、一つの雑誌だけでなく、複数の雑誌にわたり、広告、ライブイベントの仕事も舞い込むので、息つく暇はありません。
 私がアシスタントの時は、雑誌社のコーディネートルームにほぼ住んでいる状態でした。二週間程、家に帰れないこともありました(笑)。

■落ち込んで相談する暇はない


 山のようにある仕事の数々。そんな中でも少しのミスも許されません。アシスタントのミスはその師匠であるスタイリストのミスとされるからです。眠れない中、ご飯の時間もままならない中、働いていたので、私の場合は集中力がどうしても切れてしまいました。結果、モデルの着替えの順番を間違えたり、忘れ物をしてしまったり、同じ失敗を繰り返したりと、基本的なことができず、師匠に怒られていました。
 こんなこともありました。形や丈の長さの確認のため、スタイリストに「この服、着てみて」と言われたけれど、洋服はモデル用の細身のサイズ。「入りません・・・」と答える私。すると、「じゃあ、痩せて」の言葉が返ってくる世界。スタイリストもアシスタントも、見られる仕事で、見た目は大事です。私はアシスタントになってから、睡眠時間が圧倒的に少なくなったせいか、4キロ増の状態でした。
 それでも、落ち込んで、誰かに相談している暇なんてありません。アシスタントの時は、つらいと思う時間はなく、常にやる事であふれ、追われていました。そんな日常に耐えられるのはわずかな人で、たくさんのアシスタントが辞めていきました。

■「憧れ」だけでは続かない


 私がスタイリストになってからの私のアシスタントたちはというと、最短3日、持って3カ月。これまで6~7人が辞めていきました。今のアシスタントは最長記録を更新中でもうすぐ2年になります。10人アシスタントがいたら、8人は数カ月以内に辞めていってしまいます。

 なぜやめるのか? 私が見てきた限り、「憧れ」だけで入ってくると、現実が余りにも厳しく、業界を去っていくパターンが多い気がします。
 スタイリストの仕事が分かっていても、アシスタントの仕事が公に出ることは少なく、知ることが難しいのでしょう。抱いている憧れや理想とは正反対で、地味で過酷な仕事ばかり。そのギャップがつらいのだと思います。

 雑誌やSNSで見るスタイリストはパーティーに行って、モデルさんと遊んで、洋服いっぱい買っている。楽しいとこばかりが表に出ているので、憧れが強くなるのも分かります。でも、現実は、お風呂に入れないほど忙しかったり、家に帰れなかったり。体力が追いついていかなくて辞めてしまう場合もあります。親が心配をして続けていくことは難しいという場合もありました。

 私がやってこられたのは、マイナスのイメージも持ってやり始めたからだと思います。アシスタントはお金がもらえないだろうな、体力的にも精神的にも過酷な仕事をするんだろうなと、憧れよりも大変さを想像し続けました。そのためか、理想と現実とのギャップは少なく、続けることができたのだと思います。
そして、アシスタントとして一番大事なことは、学ばせてもらっているという姿勢です。アシスタントの頃は、いろんなことを言われます。雑用仕事が多いので、師匠に「白い布を持ってきて」と言われて、白い布を持っていくと「黒って言ったでしょ」など(笑)。 でも、ここで大事なのは、理不尽なことへの対応を学ぶこと。そうやって、成長していきます。

 私は、専門学校に行きたかったけれど、お金がなくて叶いませんでした。それゆえ、タダで学ばせてもらっているので、嫌なことがあっても、これが勉強と素直に思えました。やらされている、使われていると思うと嫌になります。信頼関係も崩れていきます。やっぱり、学ばせてもらっているという姿勢が大切です。もちろん、時々愚痴もありますが(笑)。

 スタイリストになって落ち着いた今、アシスタント時代を振り返って初めて、あの時は辛かったなとも思います。アシスタントを見ながら、私もこういう時期があったなぁと。ただ、アシスタント本人が仕事を学ばせてもらっているという姿勢にさせるのもスタイリスト。人を育てることも大事にしていきたいと思います。