今春、歌手の宮城姉妹として、2枚目のシングルCDをリリースすることになりました。コラムの第6回でも紹介しましたが、デビューは2年前。
県内外皆さんに、魅力溢れるサンバ文化を、踊りだけでなく言葉と音楽を通して伝えたいとの思いで、一つ年上の姉と二人、姉妹ユニット「宮城姉妹」として活動しています。パワフルな私たち?なので、歌うだけでは物足りず、企画やコンセプト作りなど、曲を生み出すところから携わり、セルフプロデュースも手がけています。
 常に音と触れ合い、踊っているサンバダンサー。私自身もヒップホップや洋楽など、幅広いジャンルの楽曲を聴くほど、音楽は大好き! とは言っても、音楽を作る知識も技術も乏しく、自分で作って歌うとなると話は別。プロの力を借りないことには、次に進みません。
 という事で、音楽プロデューサーであり、県出身シンガーソングライターの石川清貴(きよたか)さんに、様々な音楽制作のアドバイスを頂きながら、私、Yayoは作詞家としても活動しています。経験はまだまだ浅いのですが、今回は、作詞家としての舞台裏を紹介します。

【CMソングでも有名な、アーティスト石川清貴さんと宮城姉妹】

【アイデアの段階では手書き。全体が見えてきたらパソコンで打ち込みます。】

【リオの有名観光地、コパカバーナを彷彿とさせるサンビセンテの景色】

【「南桜」のモチーフ。家族での思い出が深い、八重岳の桜。】

【作詞家として、生みの苦しみが喜びに変わる瞬間】

【CMソングでも有名な、アーティスト石川清貴さんと宮城姉妹】 【アイデアの段階では手書き。全体が見えてきたらパソコンで打ち込みます。】 【リオの有名観光地、コパカバーナを彷彿とさせるサンビセンテの景色】 【「南桜」のモチーフ。家族での思い出が深い、八重岳の桜。】 【作詞家として、生みの苦しみが喜びに変わる瞬間】

(1)作詞のこだわり「ストーリー」


 1枚目のシングルでは、石川さんに曲作りの相談をした時点で、歌詞につづりたい内容のイメージが固まっていました。姉妹で初めてカーニバルを目指した時の勇気や努力。人は1人では越えられない壁でも、家族や仲間たちと力を合わせることで必ず乗り越えらえるといった、前向きな気持ちを歌いたいと思っていました。ただ、私が書いた歌詞は、作詞の「さ」も分かっていない素人丸出しの紙切れ。でも、石川さんに思い切って差し出したところ、けちょんけちょんにされるのかと思いきや、さすが!県内屈指のシンガーソングライター。「表現したい事、何となくわかった」と、頷きながら歌詞を持ち帰ってくれました。しかも、その2日後にはデビュー曲「オキナワンカーニバル」の原曲が送られてきました。
 その後、プロの指導も受けながら、作詞を重ねてきました。その中で、私が気をつけている事は「ストーリー性」。ドラマチックな流れや展開です。
 歌の中で一番、盛り上がる部分はサビ。このサビをより印象的に、説得力のあるメッセージとして感じでもらうには、曲の序盤からサビに向かうまでの言葉選びやストーリーの盛り上げ方が大切だと思っています。
 サビにパワフルで力強い言葉を使うなら、サビの手前までは、あえて優しい言葉を使います。宮城姉妹の歌は、老若男女に親しまれているサンバ文化と同様に、ファミリーを中心とした広い年齢層の皆さんに聴いていただきたいと思っています。だからこそ、ずっとアゲアゲ、盛り上がりが続く曲では疲れてしまい、本当に伝えたいことが伝わりにくいと考えています。この絶妙な流れやバランスを作るには、歌詞を書き終えた後も、何度も何度も全体を見直して、一字一字、言葉の表現が最適なのかと、声に出して読み上げたり、気になる言葉は、他の言葉で置き換えられないかと探すこともあります。

(2)「BEGIN」との会話から生まれた2枚目シングル


 今回の2枚目の楽曲「トゥファオン」(ポルトガル語で「強い風」、「台風」の意味)は、昨年10月、石川さんから「宮城姉妹のパワフルなイメージで作った曲のアイデアが、一つあるんだ」と提案がありました。聴かせてもらうと、まるで忍者が「サササササ…」と、地を駆けていくようなスピード感に、何かが押し迫ってくるような勢い! この時、私の頭では、ある言葉とアイデアがひらめきました。それは、「台風」! 清貴さんが作ってくれた曲に、4日かけて、私の詞を乗せていく形になりました。

 実は、「台風」を選んだのは沖縄を代表するアーティスト「BEGIN」さんと一緒にお仕事したことがきっかけでした。
 会話は、ブラジルや世界で活躍する沖縄のウチナーンチュの話題になりました。沖縄からは、ブラジルやハワイ等に多くの県人が移り住み、農業や養豚業の分野でその活躍や功績が称えられています。その中で、BEGINさんから「世界で活躍するウチナーンチュは、台風根性があるからここまでやってこられた」との言葉がありました。
 ある県系人は「台風は、生活に様々な被害が出るネガティブなものだと思われるけど、沖縄の人たちは、たとえ台風で根こそぎ全てを持っていかれても、またゼロから作っていこうという逆境に打ち勝つ力、粘り強さを鍛えられているのだ」と話したそうです。
 それを聞いた宮城姉妹はこう思いました。「それなら、宮城姉妹が台風の目となって、世の中のネガティブを吹き飛ばし、勇気を持って前進する力になろう!」と、今回の曲にはそんな思いを込めて、「吹き飛ばしてよ、向く風よ。もう迷う事は無い。進め!声をあげて」と歌詞を乗せました。

(3)大好きな絵が、言葉になる


 新曲は全3曲。ブラジルと沖縄との懸け橋になることを歌った「チムボンボン」、しっとりとしたバラード「南桜(みなみざくら)」にも、作詞家Yayoの魂が込められています。
 中でも、「チムボンボン」には、歌詞で描きたい「絵」が真っ先に頭の中にありました。昨年、ブラジルでも沖縄でも、たくさんの交流をさせていただいた那覇市の姉妹都市、サンビセンテ市です。地球の裏側にある沖縄と不思議な縁で結ばれ、美しい海岸線に、気候も人もとても温かな楽園。あの大好きな風景を「どこまでも伸びる海岸線。天と地が繋ぐユートピア」と表現しました。
 さらには歌詞を書きながら、宮城姉妹の活動は、ブラジルと沖縄の文化(芸能音楽や特産)交流の幅を広げるスタートの扉であったのではないかと考えるようになりました。これまで、本場ブラジルのカーニバル出場をゴールと捉えて無我夢中で踊ってきましたが、それはゴールではないのではないか。扉の向こうに広がる世界に、想像を巡らせると、急に鳥肌が立ってきて、心臓の鼓動が速くなっていくのを感じました。これだ!と思って、タイトルは、沖縄のしまくとぅば「チムドンドン」(胸がワサワサする、鼓舞されるの意味)に、ブラジルポルトガル語で「良いね!」を表すBom(ボン)、を掛け合せた「チムボンボン」に決定。2倍も3倍も胸が飛び出しそうなワクワク感で新曲は勝負です。

 もう一つ、家族の思い出がたくさんある沖縄本島北部の八重岳の桜の情景は、バラード「南桜」で描いています。私たち姉妹の背中を押してくれているのは、今は亡き、父の存在です。サンバダンサーとして活動し、カーニバルに出場する私たちを育ててくれました。八重岳の桜は、年間で最も寒い1~2月、濃いピンク色で咲き誇ります。「希望の春を南から告げる」をコンセプトに詞をつづりました。

(4)「何を伝えるか」


 「よし!この3曲で行こう!」と、自信を持ってOKが出せるまで紆余曲折。煮似詰まったり、並べた言葉にピンとこなかったり、また一から作り直したり。歌詞だけで3週間ほど時間がかかりました。今、ようやくレコーディングも終わり、ジャケットを撮影し、少し落ち着いてきました。振り返ってみると、作詞はボキャブラリーの豊富さ、アイデア、表現力など、様々なスキルやテクニックが必要とされますが、何より大切なのは「何を伝えるか?」といった、1本の柱をしっかり持つことでした。これは、サンバダンサーとして表現する時の一番大切なことと共通しています。いくら技量が備わっていても、表現者自身が、心身健康で、元気や明るさを心から伝えようと踊らなければ、魅力あるダンサーにはなれません。
踊りで、そして歌で、これからも果敢に挑戦しながら前進していこうと思います。
そして皆さんも一緒に、新たな世界に胸弾ませてチムBomBom!!しましょう。届け!サンバパッション!