じつはシーズン開幕直前に、岸本隆一にロングインタビューをさせてもらっていた。大変長らくお待たせして恐縮ではあるけれど、ようやく書く日が来た。
 球団史上3度目の頂点を極めた5月、有明コロシアム・コート上でのMVPインタビューの際の涙の意味、10月のその時点で語った「自分は持ってるなぁ」としみじみ思う理由、等々、1時間以上の時間をかけてたっぷり聴いた話なので、やはりこの連載でも複数回書くことにしたい。
 絶好調時と比べれば、現在の岸本は、少しもがいている時期のようにも見える。それゆえ今こそ、エールをこめて書く意味もまたあろうかと思う。

コートの外でも中でも、岸本は並里をとても大きな存在だと感じている(photo by Junya Nashiro)

MVPインタビューの涙の本当の意味は(photo by Junya Nashiro)

ファイナルでは持ち味のロングディスタンスの3ポイントシュートが冴えわたった(photo by Junya Nashiro)

コートの外でも中でも、岸本は並里をとても大きな存在だと感じている(photo by Junya Nashiro) MVPインタビューの涙の本当の意味は(photo by Junya Nashiro) ファイナルでは持ち味のロングディスタンスの3ポイントシュートが冴えわたった(photo by Junya Nashiro)

昨季のプレッシャーの大きさ


 去る10月1日、リーグ開幕直前の練習に汗を流した岸本隆一に、わたしは5月のMVPインタビューの涙の意味から訊ねた。
 ただ感極まって、というだけでは説明がつかないような涙の訳を、やはり本人に改めて振り返ってほしかったのだ。わたしはこう水を向けた。

―万感迫るものがあったと見えたんですが、それはシーズン中の出来事が頭の中で走馬灯のように駆け巡ったからですか?
 岸本はわかりやすく説明してくれた。
「シーズン全体のことというより、最初の頃のことを振り返ってましたね、あのときは。最初のほうのプレッシャーが蘇っていた、と言いますか…。今までチームを引っ張ってきた二人のポイントガード(与那嶺翼、並里成)が抜けて、これは本当に比較されているな、と感じていたんです。ただそれを口にしてしまうと、チームの勝利のための集中が出来なくなる気がして、胸にしまってプレーしていました。その頃のプレッシャーの記憶が、あの優勝の瞬間、一気に蘇ったんです」

―あなたは小学校から大学までたくさん場数を踏んでいるし、プレッシャーには強いタイプだと思うんだけれども、それでも特別のプレッシャーがあったんですね。
「場数を踏んだと言っても、本当に日本一を争うようなチームで活躍したわけではありません。それが、プロ2年目で、本当に日本一になれるかどうかを左右するような大役を任される立場になったわけですから、その責任の重さは、やはりまったく新たなプレッシャーでしたね」
並里成がいないチームのPGを任され、そして途中から並里がチームに戻ってきた。そのタイミングで、岸本は腕をケガしてしまい、長期休養を余儀なくされもした。

―並里に対しては、どんな意識の仕方をしていたんですか?
「並里選手は、僕と違って高校の頃から全国のトップレベルの選手として活躍している人、という意識で見ていました。チームメイトとしても、プレー以前の生活の段階から、バスケに対するストイックな姿勢が感じられて、見習うところも多いし、とても大きな存在です。ただ、シーズン最初のプレッシャーが吹っ切れて、自分自身で『やれる』という自信が持てた矢先の怪我だったので、競争する前にプレータイムをあげてしまうというのは、ちょっと嫌でしたね」

―でも、仲はいいんでしょう?
「山内選手も含めて同世代ですから、みんなフツーに仲いいですよ(笑)。目的意識をもってバスケに取り組んでいる3人だし、刺激をし合っていると思います。それでも、並里選手の、練習に入る前からの準備など、普段の振る舞いは、僕だけでなく山内選手にもいい影響を与えるものだと思います」
 このあたりは、並里成にインタビューする際には、ぜひ突っ込んで訊いてみたいポイントである。
 その並里選手がチームに戻った昨シーズン途中からの岸本の意識には、やはり大きな変化があったようだ。
 点を取る!
その役割をチームから期待されていることも強く意識するようになった。
自身は、伊佐勉ヘッドコーチから、最初で最後かというぐらいに声を荒げて投げかけられた言葉が印象に残っている。
「(2013年)12月の大阪戦で、ムーさん(伊佐HC)から、『おい、お前がシュート入れないとチームは勝てないんだぞ!』って言われたんです。喝を入れられたというか、怒鳴られたのに近い感じでした。ムーさんのそんな姿を見たことがありませんでしたから、その言葉で、自分の役割意識がハッキリしましたね」
 たしかに二人のポイントガードがコート上にいるときも、並里がゲームコントロールをしながら、岸本の得点力を活かすという流れが目立つようになっていった昨シーズンだった。

 しかし、あの有明コロシアムのファイナルで大爆発したような岸本の得点力は、このところやや影を潜めている。
 その点について最近、岸本本人、伊佐HC、あるいはキャプテン金城茂之にも話を聞いてみた。
 それを書くのは、正月のホームゲーム明けになってしまうけれども、ぜひお楽しみに。
ひと言だけでも記すとすれば、伊佐HCのこの言葉が象徴的かもしれない。
「岸本にはシュートの安定性を求めたいし、得点力に期待もしていますけど、シュートだけが彼の仕事ではありません。相手も岸本をよく研究して止めにきています。そんなときには、コート上にいるあとの4人をどう生かしていけるかが大切になります。その点をうまくやってくれていますよ。ですから、岸本の状態に関しては全然心配していません」
 もちろんそれ以外に、岸本のキングスというチームへの思い入れについてもじっくり話を聞いてあるので、合わせてお楽しみに。

 来年も「キングス連載」にお付き合いください。よいお年を!