「ワイド~♪ ワイドー♪」

【我が子に合うため、往路6時間、船に揺られて徳之島へ】

【徳之島に着くと、闘牛への愛をあちこちから感じます】

【隼ジュニアのデビュー戦の日。左から3本目がジュニアの旗】

【応援団が多すぎて、記念撮影では牛がどこにいるか分からないほど】

【我が子に合うため、往路6時間、船に揺られて徳之島へ】 【徳之島に着くと、闘牛への愛をあちこちから感じます】 【隼ジュニアのデビュー戦の日。左から3本目がジュニアの旗】 【応援団が多すぎて、記念撮影では牛がどこにいるか分からないほど】

 闘牛へのかけ声「ワイド」を音に乗せた民謡「ワイド節」の発祥地、徳之島。沖縄県本部町の本部港から船で約6時間、鹿児島県の一番南に位置する島には、私が手塩に掛けて育てた闘牛たちが住んでいます。

 2014年3月、私が育てていた「隼ジュニア」(現・黄金隼)が徳之島の大会に出場することになりました。“我が子”が大会に出場するとなれば、いてもたってもいられません。海は、甲板まで潮をかぶるほどの大荒れで、何度も吐いて倒れ込んで、船酔いする体を押して、兄弟と一緒に応援に向かいました。

■闘牛パラダイス、徳之島


 闘牛一家に育った私は、幼いころから父と一緒に徳之島を何度も訪れてきました。私の古里、うるま市石川も闘牛が盛んですが、悔しいけれど、徳之島の闘牛は日本一!! 徳之島はまさに、「闘牛パラダイス」なんです。

 夕暮れ時。サトウキビ畑が広がる道路の真ん中を1トン近くある闘牛たちが、ゆっくりゆっくり歩く姿が見られます。これもトレーニングの一環。島の至る所には、「闘牛散歩中 走行注意」と書かれた看板が置かれ、闘牛文化が島の生活に根付いていることを実感します。牛のペースで流れる時間は、ぜいたくです。

 闘牛大会に“我が子”の出場が決まると、親せきや友人、知人が牛小屋に集まって、お酒を酌み交わしながら作戦を練ります。「相手は、長期戦の牛だから、早めに仕掛けよう」「いや、こっちの体力が持たない。じっくり闘おう」。夜遅くまで、闘牛談義は続きます。
 
 応援団の気合の入れ方も日本一。「必勝」や“我が子”の名前が書かれた白やオレンジやピンクのTシャツを作り、数十人の仲間が身につけます。出場大会ごとに、必勝を祈願したタオルも制作され、自宅の壁一面にタオルを飾る人も。大相撲のような大きなのぼりも作って、試合の日を迎えるのです。

 試合当日。老若男女が応援の衣装に身を包み、試合に懸けるその勇ましい姿は、“闘牛女子”としてはほれぼれ。沖縄では、あまり見かけませんが、大会当日は、牛とたくさんの応援団が同じトラックに乗って、一緒に闘牛場を目指します。応援団は、太鼓をたたいてリズムを取り、ラッパを吹き、「ワイド、ワイド」とヤグイ(沖縄や徳之島の方言でかけ声の意味)をかけて、士気を高めます。

■勝てば舞う紙吹雪


 私が育てていた「隼ジュニア」が、太鼓の音に合わせて、徳之島の“家族”と一緒に入場してきました。背筋を伸ばし、法被やはちまきをピシっと着こなして試合に臨む応援団の姿は、あっぱれ! 私は2年ぶりのジュニアとの再会に、手は震え、写真どころではありません。低い声で「モォー」と雄叫びを上げたジュニア、気合十分。良い仕上がりです。

 いよいよ、試合開始。ジュニアの気合と勢いが対戦相手に伝わったのか、なんと、開始数秒で勝利しました! 試合中にエールを送る間もないほどの決着に、徳之島の“家族”や応援団が闘牛場内にダーッと駆け込んで、ジュニアを囲んで大賑わい。代わる代わる背中に飛び乗って、背中をさすって、徳之島流の「紙吹雪」を巻いて、ガッツポーズ。私も背中に乗せてもらいました。“我が子”の晴れ姿、うれしいものです。もちろん、頑張ったジュニアもその後、身体を綺麗に洗ってもらって、美味しい草にありついていました。

■訓練のたまもの

 さて、このような大会本番を迎えるまで、徳之島の闘牛たちは、たくさんのトレーニングを重ねます。30~50キロの重りを首に載せ、首の筋肉を鍛えます。脚力を強くするために、砂地の海岸を歩きます。沖縄でも昔はあった光景ですが、今はほとんどの海岸で禁止されているため、このような練習は少なくなってきています。

 徳之島では、早朝3時頃から稽古に励む闘牛もいます。牛主が仕事帰りも仕事に行く前も闘牛をトレーニングをすることが日常です。沖縄では、牛主の休日に闘牛場に集まって、稽古をしながら牛を育てていくので、徳之島に比べると、のんびりしています。デビューの時期も、沖縄は4、5歳ですが、徳之島では、7、8歳の大関級の闘牛になるまでじっくり稽古をして、どんな牛にでも勝てるレベルまで育ててから、デビューさせていくのです。

 でも、大変な訓練を乗り越えて、勝った時の喜びは、ひとしおです。沖縄に帰ってきても、徳之島の闘牛の試合、手に汗握って見守るおじい、おばあ、子どもたちの姿を何度も思い出します。牛と人が一心同体となって試合に懸ける「熱さ」。やっぱり、徳之島はあこがれの地なのです。