今年の夏の甲子園、沖縄尚学高校がベスト8という素晴らしい成績を残し、県民に多くの感動を届けてくれた。彼らの努力と勇気に賛辞の拍手を送りたい。でも、前回の記事で書いた太眉ブームは訪れそうにないですね…。
 さて、今年の甲子園は、球数問題、超スローボールなどが話題に上った。野球人としては、これらの見解を述べたいところだが、男子ばかりの高校球児の中、今年はおにぎりを2万個握った女子マネジャーも大きな話題に。今回は、マネジャーに注目したい。

【アイシングを手伝う高校野球のマネジャー】

【選手が使うためのタオルを洗う高校野球のマネジャー】

【沖縄の大学野球では、4年間頑張ったマネジャーに対し、大会で感謝状が授与される】

【試合が終わり、選手と談笑する大学野球のマネジャー。大会には基本的にスーツで参加。選手と密にコミュニケーションを取ることも大事な仕事だ】

【アイシングを手伝う高校野球のマネジャー】 【選手が使うためのタオルを洗う高校野球のマネジャー】 【沖縄の大学野球では、4年間頑張ったマネジャーに対し、大会で感謝状が授与される】 【試合が終わり、選手と談笑する大学野球のマネジャー。大会には基本的にスーツで参加。選手と密にコミュニケーションを取ることも大事な仕事だ】

■マネジャーがマネジメントすると?


 5年前の2009年、高校野球のマネジャーを主人公にした本が発売された。ベストセラー「もし高校野球の女子マネジャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」、略して「もしドラ」だ。
 高校2年で、野球部マネジャーのみなみが、経営学の父と呼ばれるドラッガーが書いた「マネジメント」を参考にしながら、野球部をマネジメントし、甲子園への切符を手に入れるという物語。「野球部」を定義することから始まり、マーケティングやイノベーション(変革)など、企業の経営手法を野球部で実践し、都立高校を強豪チームへと変貌させていくストーリーは、痛快だ。
 だが、現実は違う。球児を裏から支えているマネジャーが、マネジメントをすること、選手や監督を変えていくことは非常に難しい。

■マネジャーは雑用係?


 高校野球のマネジャーの役割は、球児が飲むドリンクを作ったり、汗をかいた選手にタオルを渡したりと、正直、雑用的な仕事が多い。マネジャーの希望者は、少ないのが実情だ。
 動機の多くが、野球がとても好きとか、野球をするには抵抗はあるけれど応援はしたいとか、好きな球児がいるとか…。実際、タオルを渡したいからマネジャーをやる人はほとんど聞いたことがない。

■マネジャーの壁


 今、野球のみならず、高校の運動部系の部活動のマネジメントの中心は、顧問や監督たちだ。普段の練習メニューを作ったり、練習試合などを組んだり、試合データの収集・分析などは大人が主体となる。これらのマネジメントの一部をマネジャーに任せている高校もあると思うが、専門的な知識がまだ十分ではなく、責任を背負ってしまう役割は、高校生にはまだ早いと思われている。
 本来ならば、マネジャーとは、組織の内部や外部の強みと弱みを把握し、人材を活かしながら、組織の発展を目指していく。「もしドラ」では、野球部を「顧客に感動を与えるための組織」と定義して、企業(野球部)の目的である「顧客の創造」のためにマーケティングやイノベーションを実践していく。
さすがに、高校生にはハードルが高いかもしれないが、高校野球から大学野球に目を向けると、そこには「もしドラ」のマネジメントが少なからず存在する。

■マネジメントする大学野球のマネジャー


 大学野球のマネジャーは、高校野球と同じように、選手の飲み物を用意するなどの雑用的な仕事もある一方、部員の出欠や練習記録の管理をはじめ、練習試合の調整や雨天時の練習会場探しなど、練習や試合に関するマネジメント全般を担っている。大学野球はマネジャーの存在無しではあり得ない。
 沖縄県の大学野球では、県内4大学のマネジャーが中心となって、春・秋のリーグ戦が開催される。日程の調整から球場の予約、さらには開会・閉会式の段取りや審判の手配などを4大学のマネジャーが分担しながら運営している。さらに、沖縄県のリーグ戦では、観客から入場料を徴収していないため、大会のスポンサー探しも大きな仕事だ。マネジャーたちは、大学野球界全体もマネジメントしている。

■もし高校野球のマネジャーがマネジメントをできたなら?


 大学生だからできて、高校生にできないのか。私はそうでは無いと思っている。むしろ、積極的にマネジメントに参加してほしい。そして、大人も理解を示し、高校生を後押ししてほしい。
 今年、夏の甲子園の大阪大会決勝まで勝ち進んだ強豪校のPL学園高校は、監督が事実上いない中、選手自らが采配を振って勝ち上がってきた。選手たちが相談し合いながら、野球を研究しながら、戦術も磨いてきたのだろう。
 球児の体力強化のため、マネジャーがおにぎりを2万個握った学校もある。だが、握れる人員がいなかったり、食材費が足りなかったりする学校もあるだろう。
そのような場合、例えば、マネジャーが球児の身長や体重、骨格筋量や体脂肪率、打率や打球の傾向、相手チームのデータ分析をしながら、効率の良い練習を考え、なるべく体力を使わずに試合を展開する方法を提案するかもしれない。マネジャーがマネジメントを勉強し、選手たちと協力することができれば、どんなチームでも強豪チームに生まれ変われる可能性が秘められている。

■注目されるマネジャー


 昨今、スポーツの世界では、組織のガバナンス(統治)やコンプライアンス(法令遵守)を重要視する機運が高まっている。特にマネジャーは、それらの実行を補佐し、中心的な役割を担うことなどが求められており、大学の運動系部活動のマネジャーを積極的に採用する企業もあるという。高校生や大学生には、将来を考えると、マネジャーとしての関わりをオススメする。
 さて、6日には、第64回沖縄県高校野球秋季大会が始まった。大学野球も第92回九州地区大学野球選手権大会沖縄地区予選が開催中だ。
 「もしも、ドラえもんが試合で勝つ道具を出したなら…」みたいなことがあると、スポーツは面白くない。試合に向けて、日々、努力した選手たちが、正々堂々と試合をするからこそ、スポーツは面白い。6日には、第64回沖縄県高校野球秋季大会が始まった。大学野球も第92回九州地区大学野球選手権大会沖縄地区予選が開催中だ。ぜひ、球場に足を運んで、すがすがしいプレーを見てほしい。
 そして、これからのマネジャーの活躍にも注目だ。「もしドラ」が現実になるのはそう遠くはないのかもしれない。