今回は「いじめ」について書いてみたい。

 文部科学省によると「いじめ」にも定義がある。「当該児童生徒が、一定の人間関係のある者から、心理的、物理的な攻撃を受けたことにより、精神的な苦痛を感じているもの」また、「個々の行為が、いじめに当たるか否かの判断は、表面的・形式的に行うことなく、いじめられた児童生徒の立場に立って行うものとする」とある。

 つまり「いじめ」とは、状況や内容にとらわれず本人の気持ちが重要であると述べている。更に2011年10月に、滋賀県大津市で当時中学2年生の男子生徒が「いじめ」を苦に自ら命を絶つ事件が起こった。この痛ましい事件を契機に2013年「いじめ防止対策推進法」なる法律も施行されている。
 
 私は、ひきこもり支援という仕事柄、「不登校児童」や「不登校経験のある青年」と出会ってきたが、多くの青年らが「いじめ」を受けた経験を持っていた。具体的なエピソードを交えて「いじめ」について考えてみたい。

 以前、私との個人面談を実施していたA君15歳。不登校だが元気な生徒で、外出はできた。相談は彼の母親からであったが、A君とも話す機会が持てたため、なぜ学校へ行かないのか理由を問うと「別に…面倒だから…」と小声で答える。母親の話では、学校の先生から「怠けて学校に来ないのだから、甘やかさず登校させるように」と指導を受けたという。母親もA君を登校させようとするが、朝になると腹痛を訴え学校に行こうとしない。昼頃になると元気になるため母親も怠けていると考え、厳しく登校を促すがA君は学校に行けない。

 話題を変えて趣味の話をしてみた。面談ではうつむいてモジモジしているA君だが、格闘ゲームが好きだと話し、それについては少しずつ会話が続くようになった。

 そんな面談を何度か続け、A君が私に対して笑顔を見せるようになったとき、さりげなくまた不登校の理由を聞いてみた。すると、A君が学校に行かなくなったのは中学2年の冬休み明けだと話し始めた。不登校の理由は、仲の良い友達グループから無視されていること。原因はゲームの貸し借りを巡ってのことらしいが、A君自身はっきり理由が分からないという。ただ、ある日を境にグループから無視され、放課後も遊びに誘われなくなったり、学校で孤立するようになったりして、だんだんと学校に行くのが億劫になったのだ。しかし、中1のときの友達は変わらず遊んでくれたので、その友人に誘われると遊びに行くという。

 A君のケースでは、これらすべての事が周囲から「怠け」と評価されていた。A君に了解を取り、母親とその情報を共有すると、母親はA君の気持ちに気付けなかった自分を責め、泣き出した。とても辛い場面であったが、その後A君は紆余曲折を経て、高校進学を目標に学校へ復帰した。

 2つ目のケースは、Bさん14歳。彼女の支援員からの相談がスタートだった。不登校気味だったBさんは、友人からいじめを受けていた。しかし支援員は、「いじめ」だけが原因ではなく、本人の性格的な問題もあるのではないかとの見解だった。

 支援員とBさんは、定期的に会いながら毎日登校するための相談をしていたという。Bさんの相談内容は、「集団が苦手」「特定の友人にバカにされる」ことなど。ところが、相談を重ね信頼関係も築けてきたある日、Bさんは全く登校しなくなり、支援員とも会わなくなったそうだ。支援員はどうすればよいか分からなくなり、私のところへ来たらしいのだが、私はこの「ある日を境に登校しなくなった」という状況に違和感を覚えた。そのため、この支援員にはまず、Bさんにまつわる情報をたくさん集めてもらった。するとやはり、最後に登校した日に事件があったのだ。