書店ランキング軒並み1位、異例の大ヒットだそうだ。本紙連載中の人気4こま漫画「おばぁタイムス」は、本としても華々しいデビューを飾った。

沖縄タイムス社・648円/おおしろ・さとし 1981年糸満市生まれ。代々木アニメーション学院沖縄校卒。第2、3回おきなわ文学賞漫画部門で2年連続佳作。

 本書には連載初期の分から150本が収録されているが、通して見ると絵柄や性格の変化に気づく。2人は当初あまり表情が読めず、おばぁの口からムーチーが出てきたり、耳からミミガーが出てきたりと、かなり謎めいている。何たっておじぃは身長が2メートル近くもあるのだ!

 おばぁとおじぃの日常には、結構な頻度で結構な大事件が起こる。おじぃが育毛剤を使えば手から発毛し、おばぁが畑で育てているのはちんすこう。2人しか知らない大事件、いや、2人も気づかない時もある。おじぃがタバコの火を消そうと下を向いた瞬間、上空をUFOが通り過ぎたことさえあったのだから。

 脇役たちも秀逸。おばぁに「ようへい」と間違われる孫の「なおかず」とか、設定が細かい。作者の大城さとしさんは、誰もやらないことをあえて形にして面白いと思わせる力量がある。学生時代、防災の日ポスターを描くという課題で、「棒」と動物の「サイ」を描いたこともあるという。大城さんは、すごい。

 テレビから流れる震災体験者の話を聞いて涙をこぼすおばぁに、おじぃが言う。「ウチナーンチュだからこそ その痛みは わしてーならん!」。いま誰も言わないことを直球で口にするおじぃに、しばらくこまから目を離すことができなかった(2013年3月11日付紙面、書籍未掲載)。

 遠くから見る〈大局〉ではなく、近くから見る〈日々〉のいとおしさ。小さく揺れながら、笑いながら、私たちは生きている。おばぁとおじぃだって〈変わる〉し〈育つ〉のだ。沖縄という地域で、毎日届けられる新聞に「おばぁタイムス」が載っている意味はそこにある。

 おばぁとおじぃが「この世」に生を受けて9年。ますますの長寿を願いたい。(喜納えりか・ボーダーインク編集者)(初出 2014年5月31日 沖縄タイムス)