「女性はなんでネイルに一生懸命なの? 男が爪先まで見てるかな」。男友達に言われて気になった。赤や紫のグラデーション、ラインストーン付き、キャラクターのイラスト…。ミリ単位のおしゃれを楽しんでいる女性たちをたくさん見てきた。でもネイルの世界、実情は意外と知られていない。沖縄で、追ってみた。

プロのネイリストを目指して技を磨く10代の学生=那覇市

プロのネイリストを目指して技を磨く10代の学生=那覇市 図1

全国で2番目の多さ

 2001年、タウンページに登録されていたネイルサロンの件数は、全国で892件、06年には倍の2036件で、10年は3998件だった。10年間で約4倍以上も増えた。
 都道府県別の約10万人あたりの件数では、2006年から10年まで東京都がトップ。2位は沖縄県で、06年に2・85件、10年には約2倍の5・35件に上った(図1参照)。なぜ、これほどまでに沖縄にネイルサロンが多いのか。

育児しながら自宅で開業

 沖縄で初のネイルサロンをオープンした、NPO法人日本ネイリスト協会の山内弘美さんは、「沖縄のネイリストは子どものいる主婦が圧倒的で、マンションや自宅で子育てをしながらサロンを開業している人が多い」と説明する。
 山内さんは、同協会のネイリストの修了書を持つ人だけが利用できるネイル用品専門店を経営している。オープンした11年に500人だった登録者は、この3年近くで2400人にまで膨れ上がった。
 「10代や20代の利用は少なく、共働きの子連れの主婦がほとんど。相手をきれいにしてあげて、喜ぶ姿を見られる点も魅力的なのかもしれない。でも、ネイルサロンの多さには、正直、驚いている。」

無資格、届け出不要で気軽に

 ネイルを施すプロ“ネイリスト”になって、サロンを構えるためにはどのようなプロセスが必要なのか。
 実は、ネイルサロンの開業やネイリストを名乗るために必要な資格はない。
 極端に言えば、ネイルを施したことのない人でも、今すぐ「ネイリスト」を名乗ることができる。サロンを開くために必要な機材も数十万円ほどでそろってしまう「手軽さ」も主婦に受け、サロン数の増加に拍車をかけている。それでも、ネイルを施したことのない人がサロンを開くことは考えにくい。

国の奨励金で爆発的増

 沖縄で、ネイリストが爆発的に増えた時期がある。「緊急人材育成・就職支援基金事業」、いわゆる“基金訓練”が実施されていた2009年から11年にかけてだ。国が雇用保険を受給できない求職者を対象に、パソコンなどの訓練を無料で受講しながら、訓練給付金を月額10万円ほど支給する事業だった。2010年度の沖縄県内での利用率は全国トップだった。 中央職業能力開発協会によると、基金訓練で、ネイルについて何かしら学んだ人は2009年9月から11年8月までに、沖縄県内では最大1416人。沖縄労働局によると、沖縄のネイリスト養成講座の受講者は、554人に上った。 基金訓練は、講座を開く専門学校などの実施機関が国からの奨励金を目当てに続々と定員を募集した一方で、講座の質が低く、カリキュラムがずさんだったことなどを理由に11年、終了。現在は、講座の質を確保し、利用者の人数を制限した上で、「求職者支援訓練」として続いている。華やかでおしゃれなイメージのネイルサロンだが、乱立の陰に、顧客とのトラブル、質の低下も見え始めてきた。連載第二回「ネイルの先駆けだった沖縄」