官僚の論理


 普天間代替施設をめぐっては、埋め立て予定地の辺野古沿岸の海域で絶滅の恐れが極めて高いジュゴンが昨年4~6月に毎月、海草を食べた跡を確認しながら、沖縄防衛局が情報を公開してこなかったことが、今年9月に判明した。
同局が11年12月に沖縄県に提出した普天間代替施設建設に伴う環境影響評価書には、「移設によるジュゴンへの大きな影響はない」と記されている。
 政府にとって政策遂行上、都合の悪い情報は、マスメディアが介在しなければ積極的に公表しないことに留意する必要がある。市民社会の常識とはかけ離れた官僚の論理と、自浄作用が働きにくい官僚組織の特質も指摘したい。
 裏舞台の一端を紹介する。
 12年3月。普天間飛行場の代替施設建設に伴う、名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部での環境影響評価のやり直し義務の確認などを県内外の市民らが国に求めた訴訟で、高見沢将林防衛研究所長(当時)の証人尋問が行われた。
高見沢氏は、96年のSACO最終報告作成に旧防衛庁の担当者としてかかわった高級官僚だ。
 96年当時、オスプレイ配備をめぐって沖縄側との想定問答を日本側が作成し、米側に届けられていた資料が米国での「ジュゴン訴訟」で明らかになった。
 このため、アセスの方法書や準備書作成前に日本側が配備を認識していたかを立証するために原告側が出廷を求めた。
 この資料は、96年11月27日に、在日米軍司令部から在日米大使館大使やハワイの米太平洋軍司令部などに送られたファクス文書で、「防衛庁のタカミザワ氏から在日米軍作戦計画部に提供された」と記載されている。
 この中で日本政府は、オスプレイ配備を把握した上で、米側には配備計画は隠し、「(辺野古海域に建設する)海上施設はあくまでも(オスプレイに対応する滑走路ではなく)ヘリポートである」【( )内は筆者が補足】と答えるよう要請。地元からの問い合わせに対しては、配備計画を明言しない答弁で対応するよう日米間で調整している。
 高見沢氏は法廷尋問で、想定問答の作成について具体的に回答しなかった。
 米側の文書に、日本側に配備の発表を望む、と記されていることに関しても、守秘義務などを理由に答えなかった。
 一方で、配備隠ぺいの事実はないと強調した。
 原告や弁護団は「はぐらかしに終始した。防衛省の隠ぺい体質が法廷でも明らかになった」などと批判した。
 高見沢氏は日本の外務防衛政策に携わる官僚の論理を体現した人物ともいえる。
 高見沢氏の名は、11年5月に告発サイト「ウィキリークス」が暴露した、普天間問題をめぐる日米交渉の場面でも頻出する。
 同サイトによると、09年10月、キャンベル米国務次官補らと長島昭久防衛政務官らとの会談の席で、長島政務官が席を立った後、高見沢防衛政策局長が「米側は再編計画の見直しに柔軟性を見せるべきではない」とアドバイスしたという。
 当時は、鳩山由紀夫首相が、普天間移設先の見直しを防衛省に指示していた時期だ。発足時の民主党政権が目指した「国外、県外」移設を進めるどころか、逆に政権の足をひっぱる倒錯ぶりが際立つ発言だ。
 沖縄県民の声を切り捨てるどころか、首相の指示も無視して、米側にすり寄る態度は「安保ムラ」のメンバーの神髄である「米国への自発的隷従」を地で行くような場面といえる。