驚いたことに、この映画版の『標的の村』のなかで、映画の重要なテーマの柱となっている裁判の1シーンの映像使用をめぐってトラブルが生じているというのだ。

 米軍ヘリパッド建設着工に抗議して座り込んだ東村・高江の住民が、国から「通行妨害」で訴えられるという訴訟があった。国家や巨大企業が、弱小な個人を戦術的に威嚇するために訴訟を起こす事例をアメリカでは「スラップ訴訟(SLAPP=Strategic Lawsuit Against Public Participation)」として多くの州では禁止されている。

 映画では日本版のスラップ訴訟ではないかと告発しているのだが(何しろ現場に行ったこともない当時7歳の女の子までが「被告」として国=法務大臣が訴えていたのだから)、その際、報道機関が権利として撮影している「法廷内撮影」(通常は開廷直前の限られた時間内に代表カメラが行うことが多い)の映像を使用することに那覇地裁が難色を示したというのだ。

 「目的外使用にあたる」とかいう見解だという。直接的には僕はこの情報の第一報は琉球新報の記事(7月27日付)から知ったのだが、ええっ!そんな馬鹿な!と思ってよくよく記事をチェックしてみたら、琉球新報の取材に対して那覇地裁と福岡高裁は「QABに映像の削除を求めてはおらず制裁の意図もない」と説明してきたという。
 また法廷内映像を使用した場合も「不利益な措置や制裁は取らない」と伝えてきたという。

 当たり前である。制裁って一体何に対する制裁なのだろうか。この『標的の村』はすでにテレビで放映されており、そこでも法廷内映像は使用されていた。すぐれたテレビドキュメンタリー作品が劇場映画化されることはよくあることで、その際にはオリジナルの作品で使われた映像にさらにいろいろな映像が付加されることは当然であるが、元の作品で使われた映像がどうして「目的外使用にあたる」のか。こんなことが明らかになれば世界から笑いものになるだろう。

 東海テレビの俊英・阿武野勝彦氏のすぐれたドキュメンタリー作品群(テレビ、映画版ともに)の中にも法廷内映像が使用されているが、そんなことは問題にさえなっていない。冤罪の疑いが強いと言われている名張毒ぶどう酒事件をテーマとした『約束』、死刑事件の被告の弁護を手掛ける弁護士を追った『死刑弁護人』などの作品でも法廷内映像が使用されている。