「私は日本人だ! どうか撃たないでくれ」。襲撃されたバングラデシュの飲食店で男性が懇願したという。男性の安否は分からない。日本人7人の犠牲という現実が、ただ突き付けられた

▼イスラム圏の人々は親日的だといわれてきた。彼らが敵とみなす米英やロシアと戦った過去が「評価」されていた。今はどうだろう

▼昨年日本人2人を殺害した「イスラム国」は声明で、日本を「十字軍に参加した」「国民を場所を問わずに殺りくする」と脅迫した。日本は欧米の一味-。自衛隊のイラク派遣が決定的だったという指摘がある

▼安倍晋三首相は2人が殺害された時、「日本人には指一本触れさせない」と息巻いた。安保関連法を成立させ、自衛隊を米軍に差し出した。武器禁輸政策を捨て、イスラエルと無人機の共同研究まで始めようとしている

▼方向が違うのではないか。海外勢力で日本人に危害を加えているのは中国や北朝鮮ではなく、イスラム過激派だ。現実を直視すれば、米国やイスラエルとの一体化こそが国民を危険にさらしている

▼テロは恐怖による支配だ。許されない。一方、国民の命と安全を守る以上に大切な国の仕事もない。イスラム圏で傷付いた日本のイメージを回復する独自外交の知恵が今、求められている。日本人だと名乗ることが安全に結び付くように。(阿部岳)