赤ん坊を抱っこする姿勢は明らかに不自然だった。ハンセン病回復者の金城幸子さん(75)が、生後1カ月の私の長男を抱く写真。撮影はハンセン病訴訟の勝利から約1年が過ぎた2002年4月

▼人は赤ん坊を抱くと頬ずりしたくなるのが人情だ。しかし写真の金城さんは、抱いた赤ん坊から自分の顔を目いっぱい離していた。電話で問うと「私が頬ずりしたら、あんたたちがどう思うか気になってね…」。電話の向こうでおえつが漏れた

▼国の差別政策を訴えたハンセン病訴訟で、金城さんは本名を明かして闘った。メディアにもたくさん登場し、勝訴後は「これからは堂々と生きていく」と宣言した人だ

▼それでも、こういう場面でためらいが出る。いかに社会がハンセン病にかかった金城さんらを追いこんできたか、差別の根深さを痛感した

▼1日、沖縄タイムス賞の社会活動賞を受けた金城さんは祝賀会場で多くの人と頬を寄せ、喜びを分かち合っていた。「見ず知らずの人がたくさん私に握手してくれてね。本当に感激した」

▼賞は90年の差別政策の中で死んだ人、全ての回復者を代表して受けたという。翌日、沖縄愛楽園に賞状や記念品を持って行くと、多くの入所者が「幸子、偉いねー」と泣いて喜んでくれた。この人たちに、二度と悔し涙を流させてはいけないと強く思う。(磯野直)