先日、ある会合で「薬が多い」という相談を受けました。5剤ないし6剤以上を多剤服用の目安としますが、それは以下の理由によります。5剤以上服用すると診療所の高齢の患者では転倒の危険性が増し(特に睡眠導入剤)、6剤以上服用すると薬の副作用の発生頻度が増加することが報告されています。

 今までにない症状や不具合が出現した時は新しい病気を考える前に、まず現在服用している薬の副作用をお薬手帳で確認するように私は指導しています。

 ところが、せっかちな患者は症状を緩和する薬を求め、忙しい医者がそれに即応する現実があります。薬の副作用に対して新たな薬が処方されたり、薬が多いので予防の胃薬を下さいなどがその例です。「薬がないと心配さぁ」という薬好きな高齢者に「薬が減ることは健康になること」と時間をかけて納得させるのも家庭医の大切な役割です。

 一般に、病気を治すのではなく不快な症状を改善、緩和するために処方されるのが対症療法薬(解熱、鎮痛薬、総合感冒薬が代表的)ですが、「薬は毒。毒は必要最小限度を」という基本の考えを医者と患者が共有できれば不要な薬は減らせます。

 もちろん、救命救急や急性期で命を救うために使用される抗生物質、ステロイド剤、血栓溶解剤、不整脈治療剤、利尿剤、強心剤、気管支拡張剤などの薬、肝炎の抗ウイルス剤等の特殊な薬は副作用を考慮しても一定期間は投与すべき薬です。

 高血圧や糖尿病、高脂血症、骨粗しょう症などの慢性病は現在でも依然として完治させる薬はなく、漫然と投薬される傾向にあり、減量や中止の時期ははっきりと示されていません。

 副作用の出現に留意しながら主治医に気安く相談できる関係を築くのが薬を減らすこつです。睡眠導入剤や抗不安薬、鎮痛剤は常用することで依存に陥りやすいので、生活習慣を見直して薬に頼らない環境を作り、減量や中止に向け患者と医者の共同作業を辛抱強く続けることが大切です。

 薬のほとんどは肝臓や腎臓で代謝されて体外に排出されます。高齢者では肝臓、腎臓機能が生理的に低下しているので薬の濃度が高くなり過ぎ(効き過ぎる)、また長く血中に残りやすい(蓄積しやすい)ので成人常用量の2分の1~3分の1から開始するのが良いとされます。複数の科や病院を受診する高齢者では薬を一括管理してもらう「かかりつけ薬局」を決めて薬の相談をすると良いでしょう。

(仲宗根 和則 なかそね和内科)