7月10日実施の参議院議員選挙で自民・公明・おおさか維新など「改憲勢力」が衆参両院の3分の2を占めたと騒がれている。しかし、各党の改憲提案の内容は全く性質が異なる。焦点の憲法9条改正、緊急事態条項新設についても、公明・おおさか維新両党は消極的ないし反対の立場を明示している。具体的な改憲内容で合意を得るのは、かなり困難だろう。

木村草太氏

 また、沖縄で現職大臣が落選した意味は大きい。政府は、基地負担軽減の具体的計画を立てるべきだろう。

 ところで、今回の選挙をめぐる報道で、一つ残念な事件があった。安倍晋三自民党総裁が、ラジオの選挙特番への出演を拒否したのだ。

 テレビやラジオの選挙特番では、各党の幹部がインタビューを受ける。これまでは、安倍総裁も、ラジオ各局の選挙特番でインタビューに応えてきた。各ラジオ局は、ラジオは目の不自由な人にとって貴重な情報源であることを強調し、再度、取材を申し入れた。しかし、安倍総裁はニッポン放送の代表取材のみ受けると回答した。このため、他局は、その様子を放送することしかできなかった。

 まず、そもそもラジオの軽視は不当な態度だ。各局が主張した通り、ラジオは目の不自由な人の重要な情報源だ。また、ラジオは映像がない分、言葉で分析する時間が長く、テレビとは異質の報道ができる。ラジオが政権与党党首・首相に取材できなくなれば、国民が得られる情報の多様性が失われる。政権与党は、多様なメディアの前で、説明責任を果たすべきだ。

 また、特定の放送局の代表取材のみを受ける態度も、問題である。代表取材を担当したのは、ニッポン放送アナウンサーの飯田浩司氏とジャーナリストの長谷川幸洋氏の二人だった。

 長谷川氏は、自身のコラムでも安倍政権支持を表明しており、その質問内容は、「中国艦の領海侵入にどう対応するか」、「憲法改正の段取りはどのように考えているか」などであった。安倍政権の経済政策・自民党憲法草案・安保法制についての批判を踏まえた質問や、沖縄での現職大臣が落選について切り込む質問はなかった。

 もちろん、政権を支持する立場からの取材も重要であり、ニッポン放送や長谷川氏の取材そのものに問題があったわけではない。しかし、そうした方向からの取材しか受けない安倍総裁の態度は、自身への批判から逃避する卑劣な態度と見られてもやむをえまい。

 代表質問の際に、唯一、安倍総裁に対する厳しい質問があった。なぜ、ラジオが代表質問のみになったのかについて問うたのだ。安倍総裁は、総裁と副総裁との役割分担でそうなった、という趣旨の簡単な回答をするだけで、次の質問に流れていった。なぜそのような役割分担がなされたのかが問われているのに、全く答えになっていない。

 今回の選挙では、投票前の党首討論などの機会が少なく、選挙の争点が国民には見えにくかった。メディアは、国民に情報を届けるために存在する。国民もメディアも、そのことを自覚し、権力とメディアの適切な関係を実現する必要がある。(首都大学東京教授、憲法学者)