今回は寄生虫のお話です。蟯虫(ぎょうちゅう)はメス1センチ前後、オス3ミリ前後の大きさで、夜間メスが肛門周囲に産卵するので、その際おしりがかゆくなる症状です。お尻をかいた手指や寝具についた卵から経口的に感染します。小学校の頃、セロハンテープを肛門にあてて蟯虫検査した記憶があると思いますが、蟯虫症が激減、その学校健診が2015年度限りで検査の必須項目から外されました。

 回虫も蟯虫と同様にヒトからヒトに寄生します。メスは1日20万個もの卵を産み便中に排出され、ヒトのし尿を肥料としていたころは感染が継続していました。回虫はメスが30センチ前後、オスはそれより5センチほど小さい成虫に成長します。胆管炎や虫垂炎、腸閉塞(へいそく)など重篤な症状を起こすことがありました。サナダムシは数メートルにも達する寄生虫で、筆者も大腸カメラの際、1度大腸の中で遭遇しましたが、これもまれな寄生虫感染となりました。

 アニサキス症は今でも時折認めます。2~3センチのアニサキスの幼虫が寄生したイカ、サバ、アジ等の刺し身を食べた際に発症します。アニサキスは元来イルカやクジラの寄生虫で、ヒトの体では生きていけず、腸管壁に潜り込んでそこで死んでしまうのですが、その際激しい腹痛、嘔吐をおこします。内視鏡を行って虫を取り出すと症状は消失しますが、通常は症状が収まるまで対症療法で待つことになります。

 沖縄は以前、糞(ふん)線虫という寄生虫の浸淫地域で、人口の6~7%が感染していた頃もありました。糞線虫が大量に感染して栄養障害をおこし、腸管から血液中に虫体が入りこむのに伴い大腸菌が血中に一緒に入り込み、大腸菌による肺炎、髄膜炎、敗血症を含む重篤な感染をおこし多数の命を奪ってきました。ここでは詳しくふれませんが沖縄特有のHTLV-1ウイルス感染の合併が症状を重篤にしていました。人体内では虫体の大きさ0・25ミリから0・5ミリ程度ですので肉眼では見えませんが、顕微鏡でみると便中に動き回る虫体をみる事ができます。検査方法の改善や大学による治療の大規模な介入など沖縄県内での取り組みにより糞線虫症は激減しました。なによりも昨年ノーベル医学賞を受賞された大村智先生が発見されたイベルメクチンが副作用もほとんどんどなくそれまでの治療に比べ劇的に有効であった事が大きく寄与し、昨年末沖縄県医師会より大村先生に感謝状を贈られたのもむべなるかなと言えます。

 食品衛生がよくなり寄生虫症もみかけなくなり、医師の側も昔の病気と思いがちです。特に糞線虫症はまだ根絶されたわけではありませんので自戒しつつ診療しています。(金城 光世 光クリニック)