選挙権年齢が18歳以上に引き下げられる来月10日投開票の参院選で、選挙期間中に漁業実習に参加する水産高校の生徒らが投票できないことが分かった。実習生は、職業船員に適用される「洋上投票」対象外のため。初の18歳選挙権は、スタート時から公平な選挙権行使が危ぶまれる事態に陥っている。公職選挙法改正にかかわった国会や国の不作為であり責任が問われる。

 文部科学省によると、実習船参加で投票できない生徒らは16日現在、全国7校の計82人。今月6日に糸満漁港を出港した沖縄水産高校3年生ら19人が含まれる。

 洋上投票は「不在者投票制度」を広げる形で1999年にでき、2000年6月の衆院選から実施されている。

 該当する船員は、乗船前に市町村の選挙管理委員会から「選挙人名簿登録証明書」の交付を受ける。船員の申し出を受けて船長は選管から投票用紙の交付を受け、公示日後、船長が船員に投票用紙を配布して船内ファクスから各市町村選管へ送信する。

 しかし実習生は職業船員とみなされないため、一連の手続きの対象外だ。沖縄水産高校は出港後の9日に報道で知り、船長を通して洋上の生徒らに投票できないことを伝えたという。

 18歳選挙権が適用されるのに伴い、昨年から主権者教育に力を入れている同校。大城栄三校長は「授業を通して選挙権の行使は、国民の権利であることを繰り返し教えてきた。最初の行使が制度の不備でできないという事態は、教育の観点からも避けたい」と訴える。

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 水産高校は全国に46校ある。文科省は報道後、全国水産高校実習船運営協会と共に実態を把握し、洋上投票の実施については今後「総務省に制度改正の検討を働きかけていく」とする。高校生の選挙参加に伴う課題について、実習船参加以外の影響は「今のところ確認されていない」(文科省)とするが、新たな有権者を有する教育現場としても制度の不備に気付くべきだった。

 総務省は、洋上投票が議員立法であることから「制度改正には各党・会派の理解が必要」とする。しかし現在、国会閉会中であること、22日の参院選公示日が迫っていることを鑑みれば、今参院選で実習生たちの選挙権行使は難しい。

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 仕事や大学進学などで名簿登録地以外の市町村に住んでいる人、入院中の患者や老人ホームの入所者などに適用される不在者投票制度は、一人でも多くの国民の選挙権行使を確保するため近年、郵便投票の創設など適用を広げてきた。

 選挙制度の根幹理念を見ても今回の不作為は、非常に残念だ。国は、初の投票機会を奪われた高校生たちに行政執行者としての説明責任を果たしてほしい。

 18歳選挙権は参院選以降、地方選挙にも次々適用される。となれば国会や国は、制度改正を急がなければならない。